artscapeレビュー
ヘレン・ファン・ミーネ「Dogs and Girls」
2012年03月15日号
会期:2012/02/10~2012/03/31
GALLERY KOYANAGI[東京都]
ヘレン・ファン・ミーネは1972年生まれのオランダの女性写真家。1990年代半ばに、魔物に取り憑かれたような、やや畸形的な少女のポートレートを発表して広く知られるようになった。日本でも何度か個展を開催している。
今回のシリーズでは、タイトルのとおり「犬と少女」のカップリングを試みている。犬たちは古風なカーペットの上でポーズをとる愛玩犬で、まさにオーソドックスな「犬のポートレート」として撮影されている。少女たちの方は、いかにもファン・ミーネの好みの蝋人形のような静謐な雰囲気を醸し出しているが、これもまた撮り方としてはやや古風なものだ。だが、「犬と少女」が組み合わされたときに(ほかにウサギとニワトリの写真も1点ずつある)、そこに魔術的な暗合が生じてくるように感じる。隣り合ったイメージにとりたてて関連性はないのだが、少女たちだけのシリーズを見るときよりも、禍々しさ、猛々しさが強まっているように感じられるのだ。少女のなかに潜んでいた動物的なエロスが、犬の存在によって触発されるのかもしれない。犬の写真を大きめに、少女の写真を小さめにプリントした展示も効果的だった。ファン・ミーネの作品世界において、この試みが単なるエピソードになるのか、それともこれから大きく育っていくのかはわからないが、今後の展開を注意深く見守っていきたい作家のひとりであることは間違いない。
2012/02/14(火)(飯沢耕太郎)