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artscapeレビュー

石子順造的世界──美術発・マンガ経由・キッチュ行

2012年03月15日号

会期:2011/12/10~2012/02/26

府中市美術館[東京都]

60~70年代に美術だけでなく漫画やキッチュといったサブカルチャー批評にも手を広げ、オタクやネオポップの蔓延した近年、再び注目を集めている石子順造(1928-77)にスポットを当てた展覧会。会場は「美術」「マンガ」「キッチュ」の3つに分かれ、まず「美術」は、池田龍雄、赤瀬川原平、横尾忠則ら石子が評価した作家の作品と、1968年に中原佑介とともに企画に加わった「トリックス・アンド・ヴィジョン展」の再現から成り立っている。とくに「トリックス・アンド・ヴィジョン展」はいまや伝説的な展覧会といわれ、意外な作家の意外な作品も出ていて、よく集めたもんだと感心する。次の「マンガ」は一室全体がつげ義春の「ねじ式」の原画展示にあてがわれ、隣室で当時のほかの劇画も紹介してはいるものの、漫画といえばあたかも「ねじ式」が代表といわんばかりの扱いだ。つげ義春や「ねじ式」を知らない者はなにごとかと思うだろう。ちなみに「トリックス・アンド・ヴィジョン」も「ねじ式」も1968年の事象。最後の「キッチュ」は、銭湯のペンキ絵やエナメル板の広告、造花や花輪、モナリザや1万円札の模造品、食品サンプル、大漁旗といったポップな品々を集めていて、時代を超えて楽しめるのはここだろう。サブタイトルには「美術発・マンガ経由・キッチュ行」とあり、美術はキッチュという最終到達地に行きつくための出発点にすぎないとも読めるが、それもいまとなっては納得できる。

2012/02/19(日)(村田真)

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