artscapeレビュー

project N 48 佐藤翠

2012年03月15日号

会期:2012/01/14~2012/03/25

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

難波田史男とオペラシティのコレクションを見た後でここにたどりつくと、20世紀と21世紀の日本の絵画がどれほど変わったかを実感できる。クローゼットやシューズラックは以前からのモチーフだが、とくにシューズラックの正面から見た構図と靴の配置、藤色を主体とした絶妙な色彩、地と図のせめぎ合いなどはすばらしいというほかない。もっと驚いたのは、木枠に張らない綿布に装飾的な抽象パターンを描いた作品。これはなにかと思ったらカーペットではないか。織物のカーペットを綿布に描くという自己言及的な行為もさることながら(これは具象か抽象か)、複雑に入り組んだペルシャ絨毯の文様を薄く溶いた絵具でホイホイこなしていく(という形容もなんだが)度胸とセンスには舌を巻く。木枠に張ってないのはこれが「カーペット」だからだが、なかでも1辺2メートルを超す正方形の作品はパリ滞在中につくったものなので、運搬しやすいように綿布のままにしたらしい。だとすればこの絵は、絵画の内容と形式と制作の条件がすべて一致したところで成り立っていることになる。史男くんには悪いが、もうこれだけで見に来た甲斐があったというものだ。

2012/02/19(日)(村田真)

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