2021年10月15日号
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artscapeレビュー

鷹野隆大「モノクロ写真“Photo-Graph”」

2012年03月15日号

会期:2012/01/17~2012/02/29

Yumiko Chiba Associates viewing room Shinjuku[東京都]

昨年、松江泰治、鈴木理策、倉石信乃、清水穣と「写真分離派宣言」を出して話題を集めた鷹野隆大。どうやら、彼の銀塩写真へのこだわりは本気度を増してきたようで、今回のYumiko Chiba Associates viewing room Shinjukuの新作展には、文字どおりの銀塩「モノクロ写真」が出品されていた。
本展の開催は以前から決まっていたにもかかわらず、なかなか構想がまとまらず「何を撮っていいのかわからない」状態が長く続いていたのだという。言うまでもなく「3・11」の後遺症だったのだろう。そこでもう一度原点に回帰するという意味を込めて、「モノクロ写真」を撮影・プリントし始めた。そこに思いがけず出現してきたのは、鷹野自身の言い方を借りれば「崩壊した光の残骸」としか言いようのない、不分明で不定形のイメージ群だった。ロールサイズの大判プリント4点を含む写真のほとんどが、抽象画を思わせる光と影の染みであり、その間に繰り返し彼自身の影が写し込まれている。それは例えば、森山大道がよく画面の中に登場させる、くっきりとした物質感を備えたシャドーではなく、もっと希薄で、ぼんやりと揺らいでいる影の形だ。このような、これまでの鷹野の写真にはほとんど登場してこなかったファントムめいたイメージに固執せざるをえなかったところに、「3・11」が彼にもたらした衝撃と傷口の大きさをうかがうことができるように感じる。
だがこれはこれで、鷹野の再出発のスタートラインとして充分に評価できるのではないだろうか。ここにも「震災後の写真」のひとつのあり方が明確に示されている。

2012/02/07(火)(飯沢耕太郎)

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