2021年10月15日号
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artscapeレビュー

ジェームス・ウェリング「ワイエス」

2012年03月15日号

会期:2012/01/20~2012/03/10

WAKO WORKS OF ART[東京都]

WAKO WORKS OF ARTでのジェームズ・ウェリングの展示も、今回で7回目になるのだそうだ。これまで、アルミホイルを撮影したほとんど抽象画のような作品や、ドイツ・ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲンの工場、虹のような光に照らし出された「温室」の写真など、展示のたびに彼の多様な側面を見ることができた。いつも新たな領域に果敢に挑戦していくウェリングの展覧会のなかで、今回の「ワイエス」は今までで一番「古典的な」写真シリーズと言えるかもしれない。仮にウェリングの名前がなければ、きわめてオーソドックスな作風の、ドキュメンタリー写真家の作品といっても誰も疑わないのではないだろうか。
それは、ウェリング自身が写真家として活動する前の少年~青年期に、アンドリュー・ワイエスの絵画作品を愛好し、強い影響を受けていたという個人的な事情が大きいのではないかと思う。メイン州クッシングとペンシルバニア州チャッズ・フォードにある、ワイエスの画家としての活動の拠点となった家、彼が描いた森、岩などの風景を撮影するウェリングの視点は、ワイエスの絵と完全に重なり合っているのだ。むろん、天井のフックを撮影した4枚組の作品や、ワイエス自身も描いた汚れた鏡に映る像など、いかにもウェリング好みの被写体の解釈も散見する。だが今回のシリーズに関しては、あくまでもひとりの画家の眼に成りきるということに徹している様子がうかがえる。これはこれで、この多彩なアイディアと抜群の視覚的なセンスのよさを兼ね備えた写真家の、意欲的な実験のひとつと言えそうだ。

2012/02/03(金)(飯沢耕太郎)

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