artscapeレビュー

奈良県障害者芸術祭:HAPPY SPOT NARA 2011-2012

2012年03月15日号

会期:2012/01/26~2012/02/05

奈良県文化会館展示室[奈良県]

奈良県が今年度から実施している「障害者アート創出事業」。「障害のある人とない人のつながり」をテーマに昨年の夏から音楽やダンス、演劇、美術などの分野で創作活動が行なわれ、その成果発表としてこのプログラムが開催された。会期中は、奈良町界隈や近鉄奈良駅周辺商店街での作品展示のほか、ワークショップ、演劇やダンスの公演なども行なわれていたが、この日、見に行ったのは「アートリンクプロジェクト」という展覧会。参加作家は、前川紘士、中井由希子、中谷由紀、山村幸則、東學、高木義隆、うなてたけし、松井智惠、佐久間新、宮本博史の10名だった。会場には、表現活動をしたいと願う障害のある人とアーティストが一対一の交流を通じて制作した造形作品やその活動の記録などが展示されていた。アーティストが自分のパートナーに会ってから、何をどのように「つくる」のか、一緒にできることを模索するプロセスやその交流の過程について細やかに伝えているものが多かったのだが、特に印象に残ったのが那須大輔×前川紘士、森口敏夫×山村幸則、山口修平×宮本博史らのプロジェクト。なかでも前川紘士の記録メモは、ここでのコラボレーションの意味やそれをめぐる状況について、また、障害をもつ作り手との交流と制作のあり方について、葛藤も含めた作家のリアルな思いと丁寧な考察が記されていて、その誠実な態度がうかがえるものだった。個人的には「障害者とのコラボレーション」というような展覧会には、どこか不安定な懐疑心がともなうことも多い。けれど、今展では、展覧会の組織やあり方、制作の主導権といったものをめぐって沸き起こる疑問、確信のない不安定な葛藤にひとつずつ真摯に向き合おうとする作家の態度も見ることができて、それがなにより心に残るものだった。

2012/02/05(日)(酒井千穂)

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