artscapeレビュー
『ニーチェの馬』トークショー
2012年03月15日号
会期:2012/02/19
シアター・イメージフォーラム[東京都]
トークのために、劇場にて鑑賞した。前はコメントを寄稿するため、DVDだったが、これは「映画館」で見るべき作品である。上映終了後、再び光に包まれる劇場の意味は家では絶対にわからない。また絶えず吹きすさぶ強風も大きな画面が必要だ。鑑賞しながら、長回しを時計で確認したが、ワンカット平均5、6分だった。実際、2時間半で30カットらしいので、計算通りである。『ニーチェの馬』は日常の反復を描くが、じゃがいもを素手で食べるシーン。1日目は父、2日目は娘を中心に映し、3日目は窓側から2人を、5日間は室内側から2人を、そして6日目は……という風に、反復しながら、状況に合わせて変容していく。繰り返される窓の外を眺めるシーンも、四日目に初めて屋外側から映すのも興味深い。家に閉じ込められているかのようだ。これは窓映画である。タル・ベーラの『ヴェルクマイスター・ハーモニー』や『倫敦から来た男』にも類似したショットはある。前者はそれ以外にも開口の人影の印象的なシーン、後者は窓まわりの光と影の美しい効果を表現しているが、『ニーチェの馬』がもっとも窓の実在を考えさせる。
2012/02/19(日)(五十嵐太郎)