2021年11月15日号
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artscapeレビュー

ミュシャ展──パリの夢 モラヴィアの祈り

2013年04月15日号

会期:2013/03/09~2013/05/019

森アーツセンターギャラリー[東京都]

ミュシャというと、19世紀末のパリの街角を飾ったアールヌーヴォー様式のポスターで知られるイラストレーター、程度の認識しかなかったが、それはサブタイトルの前半「パリの夢」の部分。後半生は故国モラヴィア(チェコ)に戻り、壮大な絵画連作「スラヴ叙事詩」をはじめスラヴ民族のための芸術に身を捧げていく。これが後半の「モラヴィアの祈り」だ。知らなかったなあ、美術史に載ってないから無理もないが、帰郷後の活動が美術史に出てこないのはローカルな民族主義芸術にしか見られなかったからだろう。そこが東欧出身のツラさであり、同じ世紀末を彩ったウィーンっ子のクリムトとの違いかもしれない。出品作品は、ポスターやグラフィックデザインが大半を占める前半に対し、後半は油絵もたくさんあって、超絶的といっていいほどのテクニシャンぶりを見せつけているが、すでに前衛芸術華やかなりし20世紀前半にあって、職人技を駆使したミュシャの油絵は社会主義リアリズムと紙一重に映ってしまう。そこがクリムトとの最大の違いかも。余談だが、ミュシャは秘密結社フリーメイソンのメンバーであり、チェコではグランドマスター(最高大総監)も務めたという。そういわれれば、とくに後半は神秘主義のニオイがしないでもない。ともあれ、知られざるミュシャの一面を知ることができた点では有意義な展覧会だった。ところで、知られざるミュシャといえば、同展とは別に、その名もズバリ「知られざるミュシャ展」が日本各地を巡回している。こちらはチェコの個人コレクションを中心とする展示だが、サブタイトルが「故国モラヴィアと栄光のパリ」となっていて、内容的にはほぼ似たようなもの。ふたつ合わせて見るといい、つーより、なんでふたつ同時にやるんだ? なんで合体してくれないんだ?

2013/03/08(金)(村田真)

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