artscapeレビュー

東川哲也「New Moon」

2013年04月15日号

会期:2013/03/01~2013/03/26

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

東川哲也は1982年愛知県瀬戸市生まれ。2005年に日本大学芸術学部写真学科を卒業し、現在朝日新聞出版写真部に所属しながら作品を発表している。昨年開催された「EMON AWARD 2012」でグランプリを受賞した本作は、東日本大震災直後の2011年4月から、新月の夜に被災地に残された家屋を撮影し続けたシリーズだ。闇の中にヘッドライトで照らし出された建物が浮かび上がる様子をやや距離を置いて撮影し、728×485ミリの大判プリントに引き伸ばして展示している。プリントをおさめたフレームの内側にLEDのライトを仕込み、画像を透過光で浮かび上がらせるという仕掛けがとても効果的で、建物に残る震災の傷跡が、静かな、だが説得力のある眺めとして定着されている。
だが、これはほぼ同世代の川島崇志の作品とまったく同じ感想なのだが、その巧みなインスタレーションによって、展示全体が均質に見えてくることは否定できない。東川が報道写真的なアプローチを避け、スタイリッシュで美学的なフレーミングや展示方法に固執した気持ちもわからないではない。だが、このところ発表が続いている写真家たちによる、「震災後の写真」への取組みには、志賀理江子のような例外を除けば、どこか共通した弱点があるように思えてならない。ノイズを削ぎ落とし、一定の枠組みの中に作品を落とし込んでしまうことで、彼らが現場で受けとめていたはずのリアリティが、どんどん希薄になってしまっているのだ。もう少し皮膚感覚を鋭敏に研ぎ澄ませ、全身で抗い続けないと、震災後2年を経て風化していく状況に押し流されるままになるのではないだろうか。

2013/03/18(月)(飯沢耕太郎)

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