artscapeレビュー

せんだいデザインリーグ2013 卒業設計日本一決定戦

2013年04月15日号

会期:2013/03/09~2013/03/10

せんだいメディアテーク、東北大学百周年記念会館川内萩ホール[宮城県]

SDL2013、すなわち卒業設計日本一決定戦に審査員として参加した。実はファイナリストを決める際、爆弾にできると判断した作品をひとつ入れようとしたのだが、それがかなわず、困ったことになったなあと思っていた。強く推すのと、強く批判されるような案がないと議論が盛り上がらないからである。経験的にまあまあイイ作品ばかりだと面白くない。さて、ファイナリストに残った10名中7名に投票していたのだが、審査の過程で投票していなかった高砂充希子の「工業と童話」を推すことにした。彼女のプレゼンテーションに対し、童話が中途半端と批判したら、堰を切ったように語り始めたからである。また同じく審査員だった内藤廣さんによると、彼女が東京でプレゼしたときは完全にパブリンとファクタローのキャラを封印していたらしい。そもそも、こうしたイベントでは、デザインが優れているだけでは、入れないことにしている(それは建築家や大学の先生に褒めてもらえばいい)。なぜ投票するのかの理論を発見できるような案を推したい。妄想的な寓話を構築する一方、建築の言語でもきちんと説明可能な二重性を、ここまで成し遂げた学生を初めて目撃した。だから、票を入れた。京都大学の渡辺育は光と音のダンテウムと言うべき圧倒的な案だと思っていたので、何度も彼が説明を付加できるように質問したが、結局、自分にとっての「発見」がなかったので最後は票を外した。残り2つで推した田中良典のお遍路巡り建築と、柳田里穂子の遺言の家は、よくわかる案だっただけに、個人的には逆に伸びしろがなかった。遺言の家が初遭遇なら、もっと推したと思う。しかし、アンフェアかもしれないが(数回SDLの審査を担当したために、過去の大会の履歴を踏まえているという点)、2008年の斧澤未知子「私、私の家、教会、または牢獄」を超えていなかったと思う。あのとき私性建築の最終兵器と論じたが、やはり超えるものはない。

2013/03/10(金)(五十嵐太郎)

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