2021年11月15日号
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artscapeレビュー

夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史[北海道・東北編]

2013年04月15日号

会期:2013/03/05~2013/05/06

東京都写真美術館 3階展示室[東京都]

東京都写真美術館で2007年から開催されている「夜明けまえ」の展示も4回目を迎えた。今回は[北海道・東北編]ということで、全国各地の美術館、博物館、図書館、資料館に古写真の所在を問い合わせ、現地調査を繰り返して新たな資料を発掘していくスタイルも、すっかり定着したようだ。特に今回の北海道・東北地方は、幕末から明治期にかけて多くの注目すべき写真家たちが活動した地域であり、横山松三郎、田本研造、武林盛一、佐久間範造(以上北海道)、菊池新学(山形)、屋須弘平(岩手県出身、中米グァテマラで活動)、白崎民治(宮城)らの500点を超える写真群はなかなか見応えがあった。アルバムなどを展示するときに、掲載写真を複写し、壁に映写して見せるやり方もうまくいっていたと思う。
今回は最後のパートに、明治時代の自然災害の記録写真が「特別展示」されていた。ウィリアム・K・バルトンと岩田善平による福島・磐梯山の大爆発後の光景(1888年)、作者不詳の山形・庄内地方の大地震の記録(1894年)、宮内幸太郎が撮影した明治三陸津波の写真アルバム(『中島待乳写真台帳』1896年)など、ちょうど東日本大震災から2年という時期でもあり、時宜を得た好企画だと思う。その資料的価値や迫真性もさることながら、写真家たちが地震や津波による死者の姿を、克明に撮影、記録し、すぐにアルバムのような形で公表していることに強い印象を受けた。東日本大震災後の死者のイメージの扱われ方(ほとんど公表されていない)とは対照的だ。死者の写真を公開すべきかどうかは、きちんと考えて答えを出すべき問題ではないだろうか。

2013/03/13(水)(飯沢耕太郎)

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