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建築卒業設計展 dipcolle 2013「ディプコレ座談会」

2013年04月15日号

会期:2013/03/17

名古屋市立大学 千種キャンパス[愛知県]

名古屋の卒計イベント、dipcolle2013に藤村龍至、家成俊勝、遠藤幹子、米澤隆らとともにゲストとして参加した。新発見という案がなかったので、一番議論が展開できそうな金城拓也の大阪・空堀プロジェクトを推すことにしたが、個人賞は家成さんとかぶったので、現地リサーチが分厚い杉本卓哉のまちを紡ぐかべを選んだ。また鳥取砂丘を敷地に選んだことで、鈴木理咲子の案もよいと思った。さて、今回はイベントのデザインについて、いろいろと考えさせられた。50人程度の出展者なので、3時間半ぶっ通しだったが、その場にいた全員の学生の話を聞くことができた。これは巨大化したSDLには不可能なこと。参加者の満足度は高いはずだ。また一位を決めないシステムになっていることから、プレゼに進んだ8人の案をだんだん絞らないため、どの案にも時間をかけられる。またプレゼにもれた案も、最後にだいぶコメントの時間をとることができた。これもおそらく、参加者の満足度は高いと思われる。一方で審査員が衝突するバトルを見たい人には物足りないだろう。無理にでも、一位を決める形式をとることで、審査員を追い込み、価値観を競わせる場に誘導しないからだ。もちろん、一位を決めず、多くの案が語られるのと、一位を決めるのと、どちらの方法もありだろう。一方で、疑問に感じたこともある。例えば、8人のプレゼの前に各ゲスト賞を発表すること。通常はプレゼを聞いて、さらに理解が深まり、しばしば評価が変わるからだ。また聴衆にとっても、どれがゲスト賞になるかという楽しみがなくなるし、ゲスト賞からもれた学生にもかわいそう。そしてよくないと思ったのは、審査員と学生の投票を混ぜて、「大賞」を決めること。3年前に目撃したのと同様、明らかに地元の大学が有利になり、遠くからアウェイで参加した学生は疎外感を味わう(審査員も)。実際、5人中2人の審査員が投票した案ではなく、結局審査員が投票しない案が大賞に選ばれた。かといって、dipcolleの学生投票をやめるべきと言っているわけではない。審査員の票が影響をもたないなら、混ぜるなというのが主張である。なぜならば、審査員が投票したことで結果の権威づけをして、利用された感じがするからだ。またあえて一位を決めないイベントだから、「大賞」と呼ばない方がよいのではないだろうか。地元が簡単に有利になるシステムは、イベントが全国区に広がりにくい。SDLは最初の9年間で東北大学のファイナリストは確か計2名のみ、10年目に初めて日本一が出た。これが1年目から地元大の優勝が続いたら、今のようにはならなかっただろう。むろん、意識的にそういうイベントをデザインしているのであれば、地域限定でもよい。

2013/03/17(日)(五十嵐太郎)

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