2021年11月15日号
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artscapeレビュー

澤田知子「Sign」

2013年04月15日号

会期:2013/03/02~2013/03/31

MEM[東京都]

1月~2月に同じギャラリーで開催した「SKIN」に続いて、澤田知子がまた新作を発表した、女性のストッキングに狙いを絞った前作と同様、今回も得意技のセルフポートレートは封印している。新たな領域にチャレンジしていこうという意欲が伝わる楽しい展示だった。
澤田はアンディ・ウォーホル美術館の依頼によって、同美術館があるアメリカ・ピッツバーグにある70あまりの企業のなかからひとつの会社を選び、コラボレートして作品を制作するというプロジェクトに参加した。彼女が選んだのは、トマトケチャップとマスタードの世界的なメーカーであるハインツ(HEINZ)社である。ウォーホルの「キャンベルスープ」シリーズへのオマージュを込めて、「トマトケチャップ」と「イエローマスタード」の容器を撮影した写真を、壁に整然と並べている。よく見ると、「トマトケチャップ」と「イエローマスタード」という製品表記が、日本語、ハングル、アラビア文字などを含む世界各国の言語に置き換えてあるのがわかる。その数は56種類。ハインツ社のマーケティングで使用されていた、ラッキーナンバーを含む57という数字よりはひとつ少ない。実は欠けている言語は、本家本元の英語の表記だという。そのあたりの徹底したこだわりがいかにも澤田らしい。細部までしっかりと作り込んである労作だ。
この「ポップアート的」な発想は、さらに大きく展開していく可能性を感じる。セルフポートレートの呪縛から自由になったことで、澤田の写真に対する姿勢が微妙に変わりつつあるようだ。ハインツ社に限らず、企業の製品の「リメイク」というのは、なかなか面白い可能性を孕んでいるのではないだろうか。

2013/03/15(金)(飯沢耕太郎)

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