2022年07月01日号
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artscapeレビュー

宮崎学「自然の鉛筆」

2013年04月15日号

会期:2013/01/13~2013/04/14

IZU PHOTO MUSEUM[静岡県]

先日、長野県安曇野市の田淵行男記念館で、自然写真の分野の優秀作に与えられる第4回田淵行男賞の審査会があった。宮崎学、海野和男、水越武といった面々と一緒に審査をしたのだが、彼らが異口同音に語っていたのは、デジタル化によって技術的なレベルは上がっているが、写真制作を支える思想や哲学といったバックボーンの形成においては、まだまだということだった。今回IZU PHOTO MUSEUMで開催された宮崎学の「自然の鉛筆」展を見て、たしかにそのとおりであることが納得できた。田淵行男賞に応募してくるアマチュア写真家など及びもつかない強靭な精神力と粘り強さで、ひとつのシリーズを仕上げていく力業は、海野や水越も含めたこの世代の自然写真家の特質と言えるのではないだろうか。
「自然の鉛筆」展には、土門拳賞を受賞した代表作「フクロウ」(1988年~)をはじめとして、自動シャッターが切れるリモコンカメラを駆使した「けもの道」(1976年~)、動物の死骸が土に還っていく様を定点撮影で写しとめた「死」(1993年~)、都市の環境に同化していく生きものたちを追った「アニマル黙示録+イマドキの野生動物」(1992年~)、地元の長野県伊那谷の丘の上に立つ一本の木を撮影し続けた「柿の木」(1991~92年)など、代表作約130点が展示されていた。それらの写真を見ていると、宮崎の写真を貫くキーワードが「循環」であることがわかる。動物や植物たちの世界は、互いに結びつきつつ変化し、そのプロセスを繰り返していく。「死体から毛をあつめて巣をつくるシジュウカラ」(2002年)の連作を見ると、死骸が新たな生命を産み落とす巣づくりに利用され、再生を促していることがはっきりと見えてくる。その生と死の循環のリズムこそが、彼の写真の基調低音となっているのだ。

2013/03/23(土)(飯沢耕太郎)

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