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第6回 JIA東北住宅大賞2012 第2次審査(現地審査)

2013年04月15日号

会期:2013/03/12~2013/03/14

[青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県]

毎年恒例のJIA東北住宅大賞の現地審査で、古谷誠章さんと3日間の強行軍だった。今回は8作品で、初めて東北六県すべてを一気にまわることになった。特に2日目は、岩手─青森─秋田─宮城─福島を一日で移動するスケジュール。改めて東北の広さを感じる。青森、秋田、山形では、豪雪の風景も見ながら、東北らしさが強く表われる住宅を見学し、卒計審査と頭を切り替え、施主や建築家の思いをうかがう。随所に東日本大震災の影響も感じる。災害後の活動についても、現地にいる建築家だからこその苦労とリアリティをいろいろと聞くことになった。残念ながら、メディアであまり伝わっていないが。さて、今回の東北住宅大賞は、蟻塚学による弘前の《冬日の家》である。東西に思い切り細長いヴォリュームをとって、完成度の高い可変性のある空間を実現した。続いて優秀賞は、3つ選ばれた。北海道の灘本幸子さんが設計した《北上の家》は、断熱性の高い分厚い白い壁で、光を均質に散らし、内部に西欧の街のような空間を生み出す。齋藤史博による《かわまた「結の家」》は、周辺の環境を生かしたシンプルな構成ながら、施主がさらに住空間を個性的に成長させていることに驚かされた。仙台市岩切の手島浩之の《森を奔る回廊》は、雑木林を避けつつ、T字のヴォリュームを巧みに配置し、自然を感じる家だった。そして以下が奨励賞である。SOYsourceによる《M先生の家》は、横に長くひきのばした家型が印象的だった。松本純一郎の《スリーコートハウス》は、ここぞという見せ場を用意した彫刻的な建築である。納谷兄弟の《新屋の住宅》は、雪が滑降する屋根のヴォリューム操作が巧い。渋谷達郎の《白鷹の家》は、眺望を確保しつつ、白いライトボックスを上にのせた興味深い構成だった。

写真:左、上から、蟻塚学《冬日の家》、齋藤史博《かわまた「結」の家》、SOY source《M先生の家》、納谷兄弟《新屋の家》、右、上から、灘本幸子《北上の家》、手島浩之《森を奔る回廊》、松本純一郎《スリーコートハウス》、渋谷達郎《白鷹の家》

2013/03/12(火)~14(木)(五十嵐太郎)

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