2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

毘堂「i-con」

会期:2011/05/10~2011/05/28

メグミオギタギャラリー[東京都]

額縁のなかにレリーフ状の顔が鎮座する。レオナルドの《モナ・リザ》をはじめ、ミケランジェロ、ラ・トゥール、フェルメール、ピカソ、モディリアーニなど名画に登場する女性の顔ばかり。木彫りに彩色したもので、ひもを通す穴や瞳の部分にものぞき穴を開け、まるでお面のようだ。いや実際、作者の本職は能面師だという。おもしろいのは、3次元の顔が2次元化された絵画を再び3次元化しているため、たとえばフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》のように斜め向きに描かれた絵は、やや歪んで立体化されていること。これはマンガを3次元化したフィギュアにも通じる、次元を往還する視覚体験といえる。しかもていねいなことにひび割れまで再現するという手の込みよう。絵画、工芸、トリックアートの境界線上に立つキワドい作品。ちなみに、お値段は高いほうから、レオナルド《モナ・リザ》、フェルメール《真珠の耳飾りの少女》、その他の順。やっぱり有名でひび割れが多いものほど高いようだ。

2011/05/18(水)(村田真)

写真の地層展

会期:2011/05/18~2011/05/22

世田谷美術館 区民ギャラリーB[東京都]

「写真の地層」展は1990年代から東京綜合写真専門学校の卒業生、関係者によって、世田谷美術館区民ギャラリーで開催されているグループ展。いつのまにか13回目を迎えた。今回の参加者は青木由希子、福田タケシ、五井毅彦、飯田鉄、岩岸修一、加地木ノ実、加地豊、小松浩子、桑原敏郎、鳴島千文、松本晃弘、三橋郁夫、森敏明、本橋松二、村松アメリ、大槻智也、佐々木和、笹谷高弘、田口芳正、谷口雅、寺田忍、潮田文である。ほぼ毎年開催されているのだが、ごくたまにしか見に行くことができない。だが行くたびに「変わりがないな」という感想を抱く。彼らが学生だった頃、また卒業して作品を発表し始めたのは1970~80年代なのだが、そのまま時が止まったような写真が並んでいるのだ。
ひと言でいえば彼らの基本的なスタイルは、「作品」としての完結性の否定ということだろう。写真家が「決定的瞬間」を求めてシャッターを切ることでできあがってくるような写真のあり方を解体することで、あまり意図することなく連続的にシャッターを切ったような写真が並ぶことになる。そのなんとも曖昧な、脱力したようなたたずまいは30年前にはかなり魅力的だった。では、いまはどうかといえば、意外なことにしぶとく輝きを放っているように感じた。さすがにデジタルプリントが多くなってきているのだが、そのなかで小松浩子の現像液の饐えた匂いが漂ってくるロールペーパーの風景や、桑原敏郎の微妙にアングルを変えて連続的にシャッターを切った写真を、隣の壁にはみ出すように増殖させる試みなどが、妙に新鮮なものに感じる。美術館やギャラリーでの写真作品の展示の多くが、一点集中型のタブローと化している現在、逆に作品主義を徹底的に否定し続ける彼らの「変わりのなさ」が貴重に思えてくるのだ。ただ、このままでは「やり続ける」だけで終わりかねない。蓄積された経験や技を、次の世代にうまく引き継ぐことはできないだろうか。

2011/05/19(木)(飯沢耕太郎)

大和田良「FORM」

会期:2011/05/21~2011/07/13

大宮盆栽美術館[埼玉県]

初夏の暑い日差しの日、埼玉県・土呂の大宮盆栽美術館に出かけてきた。大和田良が盆栽を撮影した「FORM」展のオープニングがあったためだが、大宮周辺に「盆栽村」ができていることをはじめて知った。盆栽というものもはじめてきちんと見ることができたのだが、けっこう面白かった。盆栽はいわば自然のミニチュア版といえるだろう。松や真柏のような樹木が、そのままスケールを縮小して盆の上に再現される。その意味では、盆栽は立体化した写真といえなくはない。全体を見ればリアルだが、細部を見れば現実とはかなり異なっているという意味でも、写真と似ているのではないだろうか。
大和田良がやろうとしているのは、いわばその盆栽の「写真的な」あり方を踏まえつつ、再構築するという興味深い試みだった。デジタルカメラによって盆栽の細部のフォルムが精密に捉えられるとともに、やや角度を変えて撮影した画像を「スティッチング」の技術によってコラージュ的につなげるという実験も試みている。このような取組みは、緒についたばかりであり、まだ完成されているようには見えない。だが、盆栽のような日本の伝統文化に着目することは、これから先実り多い成果を生んでいくのではないだろうか。少なくとも、盆栽が本来備えている妖しくも美しい人工美の極致は、写真にはとても相性がいいのではないかと思う。このシリーズをさらに推し進めていくと、写真を通じて日本人に特有の細やかな美意識が浮かび上がってきそうな気もする。
なお、展覧会にあわせて渓水社から『FORM Scenery Seen Through Bonsai』が刊行されている。端正なデザイン、しっかりした造本の完成度の高い写真集である。

2011/05/20(金)(飯沢耕太郎)

アートフェア京都2011

会期:2011/05/20~2011/05/22

ホテルモントレ京都 4階・5階フロア[京都府]

二回目となるアートフェア京都。昨年は1フロア35室で開催されたが、今回は4階・5階の2フロア60室が会場になり、昨年のほぼ二倍の規模。初日の金曜の早い時間だったせいか混雑した印象はなくスムーズに見て回ることができたが、それでも全部見るとやはり数時間を費やす大きなイベントなので体力も要る。さまざまな作品や作家を通していまのアートシーンを知る機会でもあるが、個人的には絵画作品については質、量ともに昨年より存在感が薄く感じられた。それにしても、この3日間の開催での総入場者数は3,550人とのこと。今回は東日本大震災のチャリティー作品販売もあったが、アートマーケットの発展とともにこのようなイベントの社会的意義や可能性についてもさらに今後はいろいろと考える機会となるだろう。引き続き注目したい。

2011/05/20(金)(酒井千穂)

フィロズ・マハムド「ラメンテーション」

会期:2011/04/16~2011/06/04

オオタファインアーツ[東京都]

オレンジ、緑、黒などさまざまな色の穀物を機体に貼りつけた戦闘機の模型が5機。戦闘機より食糧を、という意味か。作者の故国バングラデシュの国内事情には疎いのでよくわからないが、武器と穀物の二者択一は世界共通の課題だ。ステンシル技法を用いた絵画もあり、こちらは17世紀ベンガル地方の太守とイギリス東インド会社との長い戦いを描いたものだという。描かれた内容もよくわからないが、キャンヴァスの隅に凹凸をつけて不定形にしている理由も不明。四角いキャンヴァスは帝国主義・近代主義の象徴なのかもしれない。

2011/05/20(金)(村田真)

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