2019年10月15日号
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artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

白木靖子 展「シナプス・シンドローム」

会期:2011/05/17~2011/05/22

ギャラリーマロニエ[京都府]

透明のアクリル板やガラス板を三枚合わせた作品なのだが、その一枚ずつに水性ペンでさまざまな図形や象形文字のような絵がぎっしりと描かれていて、見る角度によってはそれらの繊細な線と影が複雑に絡まり、イメージがころころと変化する。その空間的な奥行きもさることながら、描かれた線を目で追って見ていくと、別のイメージやフォルムが突如として現われるような印象も面白い。なによりも、どの作品も色や線が伸びやかで美しく、作家の自由な想像力が如実に表われている気がした。小さなモノが並ぶ宝石箱の中を覗くような楽しさを味わった個展だった。山口県在住の作家で、京都では初めての発表だと聞いたが、機会があればぜひまた見たい。

2011/05/21(土)(酒井千穂)

ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー

会期:2011/04/09~2011/06/26

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

あのオペラシティの無機質なギャラリー空間で開かれる写真展てどうなんだろう? と疑問を抱えつつ行ってみた。最初の部屋の都市の写真に娘のスナップを織りまぜた展示を見て、あこりゃダメだと思った。なんで自分の娘を出すかよと。しかしパンフを読むと写真の娘はホンマの子ではないうえ、他人の撮った写真も含まれているというのでちょっと興味がわいた。雑誌の広告を撮った写真を再編集して本にまとめた《リ・コンストラクション》や、野生動物の調査の写真とハンバーガーショップの看板の写真を壁と床に並べたインスタレーション、白い雪に黒い木の枝や赤い血がまるで抽象画のように見える《トレイルズ》を見ていくにつれ、なかなかいいじゃんと思うようになった。最後はホンマが尊敬してやまない中平卓馬を撮った映像だが、なんとタバコに火をつける瞬間をとらえただけの作品。シュバッ! いやあ入ったときとは裏腹に、とてもいい気分で出ることができた。つくづく逆の順で見ていかないでよかったと思う。

2011/05/21(土)(村田真)

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李禹煥と韓国の作家たち

会期:2011/04/09~2011/06/26

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーの核となっている寺田コレクションというと、なぜか安井賞系の洋画家が多いように感じていたが、今回は打って変わって李禹煥、郭仁植、崔恩景、鄭相和ら韓国人作家のシンプルでミニマルな絵画を特集展示。へえこんな地味な作品もコレクションしていたのかと感心。こうした作品は70~80年代に盛んにつくられ、韓国固有の現代絵画と見られていたが、いつのまにかぱったり流れが途切れ、一掃されてしまった観がある。その後、韓国の現代美術はよくも悪くもグローバル化していく。それだけにこれらの作品は徒花的に見られるかもしれないが、むしろ現在のグローバル化した作品こそ徒花というべきで、これらのコレクションはとても貴重だと思う。

2011/05/21(土)(村田真)

project N 45:クサナギシンペイ

会期:2011/04/09~2011/06/26

東京オペラシティアートギャラリー4階コリドール[東京都]

限られた色数の絵具を薄く溶き、余白を残しながらサラッと描いているので、まるで水墨画みたい。ところどころ高層ビルを思わせる垂直線や遠近法的な描写が認められ、風景画のように見えなくもない。表面的には直前に見た韓国絵画と似た要素もあるが、むしろ正反対に位置しているのかもしれない。

2011/05/21(土)(村田真)

金沢寿美「38curtain」

会期:2011/05/05~2011/05/22

遊工房アートスペース[東京都]

今年2月に愛知芸術文化センターで行なわれた「アーツ・チャレンジ2011」で、展望回廊のガラス窓にカーテンを吊ったインスタレーションを制作し、村田真に絶賛された金沢さんの個展。今回は「38カーテン」というから、またどこかから38枚もカーテンを集めて吊るのかと思ったら、38は朝鮮半島を南北に分ける38度線のこと。するとカーテンは民族を分断する「鉄のカーテン」ということになる。というと、ずいぶんハードなテーマに聞こえるかもしれないが、作品は緑のカーテンを使ったインスタレーションとアニメ、それに38度線付近を旅したときの日記。この38度線には南北に緩衝地帯があり、人が入れないので緑に覆われていて(鉄ならぬ緑のカーテン)、その緑のカーテンがどんどん広がって南北を覆いつくすというのがアニメの内容だ。エコロジーや故国の分断という問題をアートに引き寄せた旧西独のアーティスト、ヨゼフ・ボイスの活動を思い出させるが、ボイスのように政治的にならず、どこかメルヘンチックな軽さを備えているのが金沢らしいところだ。

2011/05/21(土)(村田真)

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