2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

大西麻貴+百田有希《二重螺旋の家》オープンハウス

会期:2011/05/03

二重螺旋の家(東京都谷中)[東京都]

豪雨のなか、大西麻貴+百田有希による二重螺旋の家のオープンハウスを訪れた。発見的な強い空間の形式性をもちつつも、それと相反するかのような、おとぎ話を思わせる表情が共存するのが、ユニークである。旗竿敷地の奥にあるため、外観は部分的にしかあらわれず、むしろ内部空間の体験のシークエンスと周辺環境との応答がめくるめく展開していく。現代における塔の家だ。

2011/05/03(火)(五十嵐太郎)

画家たちの二十歳の原点

会期:2011/04/16~2011/06/12

平塚市美術館[神奈川県]

何年か前、兵庫県立美術館で画家の最後の作品を集めた「絶筆」展ってのをやったけど、これはその逆で、画業の出発点に焦点を当てる試み。タイトルの「二十歳の原点」というのは高野悦子の著書から採られた言葉だが、どっちかというと原口統三にどっぷり浸かった経験のあるぼくとしては「二十歳のエチュード」にしてほしかったなあ。ま、ふたりとも20歳でデビューするどころか自殺しちゃうんだけど(自殺することによってデビューしたともいえるが)。ともあれ、ここでいう「二十歳」とは正確な年齢ではなく、画家がデビューする10代後半から20代前半までの幅をもたせた年代のこと。留学先のパリで法律の勉強から画家へ転向しようとした黒田清輝の自画像から、やけに老成した岸田劉生の22歳の自画像、「へえこんないい絵を描いていたんだ」と見直した中川一政の少女像、とても10代の絵とは思えない関根正二の人物画あたりまでは想定内だった。しかし、最初からいまと変わらぬ水玉を描いていた草間彌生、19歳でグラフィックデザイナーとしてデビューした横尾忠則のポスター、なぜか津波に襲われた東北の街を彷彿させる森村泰昌の漁村風景、みずから「糞絵」といいながら「処女作にすべてがある」と認める会田誠の通称「まんが屏風」あたりになるともう想定外。というより、あまりに現在につながっているのが想定外だったのだ。会田のいうとおりまさに「処女作にすべてがある」。いやあおもしろかった。

2011/05/03(火)(村田真)

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田窪恭治 展 風景芸術

会期:2011/02/26~2011/05/08

東京都現代美術館 企画展示室1F、B2F[東京都]

豪快な1/1のスケールによって、建築に介入する田窪の「風景芸術」を紹介する展覧会だ。鈴木了二との共作「絶対現場」、美術館の吹抜けに実現できなかった鋳物の床を出現させたフランスにおける林檎の礼拝堂、そして琴平山の再生計画などの代表作がダイナミックな空間体験とともに楽しめる。改めて比較すると、やはり林檎の礼拝堂のプロジェクトが作品の密度において圧巻だった。当時の日本はまだメセナの金も存分使えたタイミングであり、そうした経済状況も追い風になったのだろう。今では難しいと思われるが、あの時代だからこそ後世に残すことができた素晴らしい芸術作品である。

2011/05/05(木)(五十嵐太郎)

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川俣正・東京インプログレス《汐入タワー》

都立汐入公園 汐入タワー[東京都]

川俣正による汐入タワーは、最上階に登ると、水平の白髭団地と垂直のスカイツリーが並ぶ、都市のパノラマを提供する木造の塔である。内部は栄螺堂のようにスロープが続き、随所に子どもがワークショップで制作した手のひらの塔を展示していた。隅田川沿いの新しい場所性をアートからとらえなおす試みといえよう。

2011/05/05(木)(五十嵐太郎)

五百羅漢

会期:2011/04/29~2011/07/03

江戸東京博物館[東京都]

震災の影響で3月15日のオープンが1カ月半ほど遅れた待望の展覧会。幕末の絵師・狩野一信によって描かれ、芝増上寺に秘蔵されてきた「五百羅漢図」全100幅を一挙公開するというのだ。これまでも西洋化した開国期の日本絵画とか、幕末の奇想画とかいった文脈で何点か展覧会に出されたことはあるけれど、一挙公開は初めてのこと。業火に包まれる地獄、匂い立つような餓鬼、血まみれの死体などを細密に、極彩色で、ときにハンパな遠近法や陰影表現を用いて描いている。そんな絵が100幅も並んでいる(凝ったインスタレーションだ)から壮観きわまりない。若冲、蕭白、北斎ら奇想の系譜のまさに正当な後継者というべきか。展覧会を監修した山下裕二氏の解説も「さながら『朝まで生テレビ』である」とか「一信のアドレナリンは最高潮に達している」とか「羅漢ビーム」とか「キリンビールの『麒麟』のようなもの」とか「『羅漢建築事務所』から『羅漢工務店』に発注された寺院の建設」とか、解説の域を超えて絶好調、もう好き放題書いている。やっぱり企画監修者が楽しめなきゃ展覧会は楽しくならないよ。

2011/05/06(金)(村田真)

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