2019年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

トーキョー・ストーリー2010

会期:2011/04/28~2011/05/28

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

TWSのレジデンス・プログラムで海外から招聘されたり海外に派遣されたりしたアーティストの活動紹介。渋谷、青山でもやってるが、ここ(本郷)が11人でいちばん多い。もっとも笑えたのは岩井優の映像とインスタレーション。まず、仮設壁を丸くぶち抜いた穴を通って向こう側に出ると、赤い照明のもと3本の映像が映し出されている。その1本は、君が代が流れるなか男女が廃屋の床を布で拭いているもので、タイトルは《フラッグ・クリーニング》。なぜ旗のクリーニングなんだろうと思ったら、最後に床を拭いた布を広げると日本と台湾の国旗だったというオチ。これは台湾に派遣された岩井が、現地に残る古い日本住宅を舞台に制作した作品だという。そして帰りに壁の穴をくぐり抜けて振り返ったとき、初めて気がついた。白い壁をぶち抜いた穴が日の丸になっていることを。これは村田真賞だ。

2011/05/10(火)(村田真)

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塩釜・松島

会期:2011/05/11

塩釜、「ふれあいエスプ塩釜」、松島、「瑞巌寺」、「五大堂」[宮城県]

塩竈と松島を歩く。あくまでも相対的な話だが、いずれも海に面してるエリアとはいえ、津波の被害は少ないほうだ。そのぶん、あちこちで地面の陥没が目立つ。やはり水からの距離があっても、流れの方向の場所だと、被害は大きくなる。長谷川逸子のエスプはもう避難所ではなくなったが、隣の公民館はまだ避難所だった。松島のある店舗の窓に、こう書かれていたのが印象深い。「奇跡の町 松島へようこそ 私達は松島の島々に守られました だから今度は私達が出来る限り がんばります」。確かに、松島湾のマリンピアから西の浜貝塚あたりまでを歩いたが、驚くほどに津波の影響が少ない。

2011/05/11(水)(五十嵐太郎)

第2回横浜開港アンデパンダン展

会期:2011/05/07~2011/05/15

BankART Studio NYK[神奈川県]

300人を超す出品者の約8割は絵画(あとは写真、立体、インスタレーションなど)、その約8割は具象画で、その約8割はデッサンからやり直したほうがいい。全体の約半分ですね。そもそもアンデパンダン展はヘタでも出せる素人の発表の場であるより、既成の公募展ではじかれてしまうような前衛的作品を受け入れる場ではなかったか。その立脚点に立ち戻らない限り、内向きの素人カラオケ大会の域を出ないだろう。

2011/05/12(木)(村田真)

今井智己「遠近」

会期:2011/05/10~2011/05/21

Broiler Space[東京都]

東京・下高井戸で榎本千賀子、小松浩子によって運営されてきたギャラリーBroiler Space。最寄り駅が京王線の桜上水という微妙な立地条件もあって、なかなか足を運べずにいたら、いつのまにか一年間という当初から予告されていた期限が迫ってきていた。次回の金村修展で活動終了というぎりぎりの時期に、なんとか間に合ったのはよかった。どこか養鶏場を思わせる細長い2階建ての建物は、たしかに写真展の会場としてユニークな造りだった。
今井智己の展示は1Fに新作7点、2Fには昨年刊行された写真集『A TREE OF NIGHT』(MATCH and Company)のシリーズから抜粋された作品が並んでいる。大判カメラによる新作は風景、室内の場面が混在しているが、全体にどこか張りつめた緊張感が感じられる。入口近くの作品の遠景に福島第一原子力発電所が写っていると聞いて納得するものがあった。水面とも地面ともつかない薄緑の苔(海藻?)に覆われた場所に、木片やペットボトルが散乱している写真も、見方によっては津波の後の光景に見えなくもない。今井のような、一般的な「報道写真」から距離を置いている写真家が、「震災後の写真」にきちんと目を向けているのはとてもいいことだと思う。
2Fの展示もよかった。白い紙に刻印された点字のクローズアップ(トルーマン・カポーティの短編集『夜の樹』だそうだ)と、街のスナップの組み合わせである。盲人以外には「読めない」点字が付されると、「読めそうな」風景やオブジェも謎めいたものに見えてしまうのが面白い、こちらは今井には珍しく小型カメラによる撮影なので、偶発的な出会いのひらめきがより強調されている。新境地といえるのではないだろうか。

2011/05/13(金)(飯沢耕太郎)

わざゼミ2010報告展

会期:2011/05/03~2011/05/13

京都芸術センター大広間[京都府]

取材見学や実習を通し、創作活動を行なう人々に京都の伝統工芸の技術や精神性を学ぶ機会を提供する芸術センターの事業「わざゼミ」。染織、木工、金工をテーマにした2010年度の参加者である天野萌、一柳綾乃、今村遼佑がその活動の成果を発表した。天野はおもに、生き物をモチーフにした立体インスタレーション、一柳は光の透過による色彩や表情の変化が美しい染色作品、今村は繊細な金工技術を用いた小さな作品。京都ならではのユニークな事業なのだが、それぞれの創作活動と京都の伝統工芸、センターとのつながりや、「わざゼミ」活動記録としての内容的な要素が希薄でいまひとつ伝わりにくいと毎回感じる。もう少し詳細に紹介されたら、もっと伝統に携わることへの関心も高まるのではないだろうか。

2011/05/13(金)(酒井千穂)

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