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2016年05月15日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:1945年±5年 激動と復興の時代 時代を生きぬいた作品

会期:2016/05/21~2016/07/03

兵庫県立美術館[兵庫県]

日本の近代史で最も激動の時代といえる1940年から50年の11年間。日中戦争から太平洋戦争、敗戦、連合国の占領統治と続いたこの時代に、日本の美術はどのような展開をたどったのかを、約200点の作品で振り返る。展覧会は4章で構成される。その区分は、戦時中でもまだ余裕があった1940年~1942年頃、戦況が厳しくなり自由な制作ができなくなった1943年頃~1945年、敗戦直後の1945年~1946年頃、戦前から活躍していた作家の再始動と新世代の台頭により、戦中戦後の断絶が徐々に見えてくる1947年~1950年だ。岡本太郎、北脇昇、小磯良平、駒井哲郎、須田国太郎、東山魁夷、松本竣介、吉原治良など錚々たるメンバーが名を連ねるほか、藤田嗣治の初期の戦争画《シンガポール最後の日(ブキ・テマ高地)》、香月泰男が満州から家族に宛てた手紙、水木しげるが捕虜時代に描いた素描が出品される。見どころが多く、大いに考えさせられる展覧会になるだろう。

2016/04/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:木内貴志個展「木内妄想芸術大学作品展─独りホームカミング─」

会期:2016/05/23~2016/06/25

成安造形大学【キャンパスが美術館】[滋賀県]

成安造形大学在学中の1997年に「木内貴志大回顧展」でデビュー。以来、「木内貴志とその時代」(2000)、「キウチビエンナーレ2001」(2001)、「キウチビデオフェスティバル2007」(2007)など、自らの名を冠した単独イベントを積み重ねてきた木内貴志。彼が、絵画、彫刻、写真、インスタレーション、映像など多彩なジャンルで表現するのは、社会や美術の制度に対する問題提起であり、それらへの屈折した愛情である。作品には、駄洒落、ユーモア、自虐ネタがふんだんに盛り込まれており、敢えて作風を洗練させないところも大きな特徴といえる。母校で初の大規模個展となる本展では、木内が妄想した芸術大学の作品展という体裁をとり、学生時代の作品から新作までを網羅。木内の作品世界=キウチズムの真髄を体験できる。

2016/04/20(水)(小吹隆文)

近代百貨店の誕生 三越呉服店

会期:2016/03/19~2016/05/15

江戸東京博物館[東京都]

百貨店の展覧会なのに、いきなり明治初期の博覧会の紹介から始まり、その博覧会から博物館に移行し、勧工場を経てようやく三井呉服店、三越百貨店の話になる。事情に疎い人は面食らうだろうが、これはモノの集め方、見せ方の劇的変化を物語っている。江戸時代の呉服店が近代的な百貨店に生まれ変わるには、商品の陳列革命が必要だった。その過程を物語る場として博覧会や博物館、勧工場を取り上げているのだ。江戸時代の呉服店では商品は陳列されず、客は畳に上がって「これこれこういう品物を」と希望を伝え、店員はそれに見合った商品を出してくる「座売り方式」だった。それが明治になると呉服店も博覧会(日本では博物館のルーツ)を見ならって品々を展示公開し、それを客が見て選ぶ「陳列販売方式」に変わり、百貨店が誕生する。つまり百貨店の前提は博覧会・博物館と同じく「見る」ことだった、というわけだ。ちなみに勧工場とは百貨店に先駆けて、博覧会の残り物を陳列販売した商業施設のこと。だから勧工場は博覧会と百貨店をつなぐ橋渡し役を果たした店といえる。このようにモノを集めて見せるというのは近代の基本中の基本だ。考えてみれば博覧会も博物館も百貨店も、すべて「たくさんのモノを集めて見せる場所」といった意味ではないか。

2016/04/20(水)(村田真)

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六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声

会期:2016/03/26~2016/07/10

森美術館[東京都]

もともと知っている作家はまあ悪くなかったのだけど、展示全体としてはあまり引っかからなかった。むしろ同館のアジア現代美術史を扱うMAMリサーチプロジェクトがいい。今回はインドネシア編である。政治が変革し、建築でも大きな変化が起きた1998年以降の現代美術の動向もさらに知りたいと思った。

写真:上=毛利悠子 下=片山真里

2016/04/20(水)(五十嵐太郎)

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スタジオ設立30周年記念 ピクサー展

会期:2016/03/05~2016/05/29

東京都現代美術館[東京都]

平日でもかなりの集客だったが、確かにピクサーの映画は、現代において最も人とお金をかけたアートである。少し粗があっても作家性の強さでグイグイ引っ張る日本のアニメに対して、コンピュータを媒介して膨大なスタッフが分業しながら、集合知を積んで、パーフェクトなアニメをつくるシステムは、建築業界の日本と海外の違いにも通じるかもしれない。

2016/04/20(水)(五十嵐太郎)

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