artscapeレビュー

2012年01月15日号のレビュー/プレビュー

ポコラート全国公募展 Vol.2

会期:2011/12/03~2011/12/25

アーツ千代田3331[東京都]

ポコラートとはPlace of“Core+Relation ART”の略で、「障害のある人・ない人・アーティストが、核心の部分で相互に影響し合う場」を指す。前回は障害者を対象とした公募展だったが、考えてみれば障害者のみを対象にするというのも(逆)差別的な匂いがするので、今回はその枠を取っ払ったらしい。つまり「健常者」にも道が開かれたわけだが、しかしそうなると基本的にだれでも応募できるわけで、フツーの公募展と変わるところがなくなり「障害者」に不利ではないかとの疑問もわいてくるが、1,267点の応募から選出された237点は大半がアウトサイダー系の作品で占められたので、結果的に「健常者」は引き立て役に回ったといわざるをえない。実際「障害者」と「健常者」と分けるのもじつに居心地が悪いが、しかしその作品を並べてみれば明らかに分けられるし、「障害者」のほうが明らかに心を揺さぶる作品が多い。つまり同じ土俵に並べて不利なのは「健常者」のほうなのだ。そのことは薄々感じてはいたけど、ここまではっきり見せつけられたことはなかったなあ。薄い紙に数字と日付をびっしり書き込んだ柴田龍平《数式》、さまざまな電車をすべて斜め上の同じ角度から記録した森居勲《列車日記》、著作権のうるさいおなじみのキャラをそのまま描いた(ただし形が歪んでいる)若林直季《ディズニーワールド》……。これら壮絶ともいえる孤高の作品群はだれにも真似できない。

2011/12/23(金)(村田真)

卯展決行

会期:2011/12/16~2011/12/25

island MEDIUM[東京都]

愛☆まどんな、大塚聰、桜井貴という若手美術家3人による同人誌サークル「うさぎっこクラブ」の展覧会。どうしても卯年にやりたいと年末にムリヤリねじこんだから「卯展決行」なんだそうだ。名画とマンガを合体させたり、ルイ・ヴィトン柄の作業着を仕立てたり、廃虚化した秋葉原を描いたり、著作権も既視感もおかまいなしに思いついたことを屈託なく出している。とはいえ、ポコラートのある種の作品のように深層意識を揺るがすものではないし、さりとて手練手管のアートの世界で勝負できるとも思えない。その中途半端な領域で猶予期間を遊んでいるような印象だ。考えてみれば日本の現代美術なんてみんなそうだが。

2011/12/23(金)(村田真)

若木くるみ「車輪の下らへん」

会期:2011/12/10~2012/01/21

ギャラリーJinプロジェクツ[東京都]

ギャラリー内に大きな回し車が置かれ、なかで女性がひたすら走っている。髪を前に垂らしているので顔がわからないが、たぶん若木本人だろう(顔を見てもわからないけど)。彼女は岡本太郎賞を受賞した版画家であると同時に、250キロマラソンを完走したこともあるというアスリートでもあるらしい。回し車の外周には風景版画が貼ってあり、ひょっとして東海道53次を走破するつもりだろうか。とにかく毎日ここで走り続けるんだろうな。アートとは関係なく、すごい人だ。

2011/12/23(金)(村田真)

ネリKitchen presents『ごちそう演奏会~冬の星~』

会期:2011/12/23

common cafe[大阪府]

電子音楽やコンテンポラリーダンスとのセッションなども行なっている琴奏者の今西玲子と、テルミン奏者の児嶋佐織が毎年この時期に行なっているライブ。この二人の演奏会には以前、別の機会にも出かけたことがあるのだが、今回の会場は大阪で、現代アートや建築を学んだ後、マクロビオティックの料理家として活動しているネリkitchen(ネリさん)のケーキとお茶のセットもついていた。冷たい冬の空気やその透明感をたたえた夜空を連想させる演奏の数々もさることながら、蓄光塗料を用いた会場のしつらいや星のモチーフのお菓子など細やかな演出にも心が躍った。魅力的なタイトル通りだ。それにしても二人のライブは前回の会場でもそうだったのだが、視覚や味覚など、聴覚だけでなくほかの要素からも音楽の楽しみ方を示してくれる。その音がまた美しいのが素晴らしい。


会場風景

2011/12/23(金)(酒井千穂)

プレビュー:ブライアン・ウイリアムズ──曲面絵画誕生

会期:2012/02/18~2012/04/08

佐川美術館[大阪府]

ブライアン・ウィリアムズ(1950-)は、山あいの集落、比叡山のうっそうとした木立をぬけてひらける琵琶湖の大パノラマなど、自然美を描いた絵画作品を通して、人間が自然と調和して営みを続けていた頃の取り戻すべき「のぞましい」景観を提案してきた。2007年以降は「曲面絵画」として、平面の制約から解放された空間の展開、人間が元来備えている広角的な視野にかなった絵画表現などを目指して創作活動を続けている。本展では、3メートルを超える作品の一部が展覧会場以外の空間にも展示される。

2011/12/23(金)(酒井千穂)

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