artscapeレビュー
2010年05月15日号のレビュー/プレビュー
田中千智「輝く夜に」
会期:2010/03/29~2010/04/03
ギャラリー現[東京都]
黒い背景に人物。建物を描いた絵もある。なかなか達者な筆づかい。黄金町では肖像画家として名をあげたから、こんどは遺影画家をやったらどうだろう。葬式のときに飾るやつ。写真じゃものたりないって人、けっこういると思う。これはもうかるぞ。
2010/04/01(木)(村田真)
井崎聖子展 共振-resonance-
会期:2010/03/29~2010/04/03
藍画廊[東京都]
一見サラッと円を描いているように見せかけて、じつはなんども重ね塗りをして構築した画面だそうだ。そうは見えないところが奥ゆかしいというか、徒労というか。
2010/04/01(木)(村田真)
森下泰輔「藝術資本論」
会期:2010/03/27~2010/04/10
サテライツ・アートラボ[東京都]
神保町の裏通りにできた銀座芸術研究所のサテライト。森下は、レンブラントの《水浴の女》をはじめ、クールベ《世界の起源》、マネ《草上の昼食》、ピカソ《赤い椅子にすわる裸婦》など名作の模写の横に、バーコードを描いた同サイズのタブローを併置した。模写した名作は、どれも女性を性的欲望の対象として描いたものばかり。そうした描く側(男)と描かれる側(女)の関係は、「他者の欲望」を「象徴交換」する「資本主義」の本質に近いと森下はいうのだが、そんな理屈より、まずはその模写の技術に目を奪われてしまう。笑えるのは、スターツヴァントの《L.H.O.O.Q.》の模写。スターツヴァントはシミュレーショニズムのアーティストで、《L.H.O.O.Q.》といえばデュシャンが《モナ・リザ》にヒゲを描き加えたパロディ作品。つまりこれ、レオナルドを引用したデュシャンをパクったスターツヴァントを模写した森下のオリジナル作品なのだ。
2010/04/01(木)(村田真)
クリストとジャンヌ・クロード展
会期:2010/02/13~2010/04/06
21_21デザインサイト[東京都]
昨年11月に亡くなったジャンヌ・クロードの追悼展、とは謳ってないけど、クリスト夫妻と仲のよかった三宅一生さんの尽力で成り立った展覧会であることは間違いない。一生さんとクリストとの接点はもちろん「布」。展示は、ブルガリア時代のクリストのドローイングから、パリでのジャンヌ・クロードとの出会いを経て、初期の梱包作品、《ヴァレー・カーテン》《包まれたポン・ヌフ》《アンブレラ》などの巨大プロジェクト、そして《オーバー・ザ・リバー》などの未実現のプロジェクトまでを紹介している。展覧会ディレクターを務めたのは、昨年末に『クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』を上梓した柳正彦。展示は本の立体版といった趣で、展覧会を見逃した人はこの本でじっくり味わってほしい。もちろん、本物の作品の持つ非現実的な美しさは本でも展覧会でも伝わらないけどね。
2010/04/02(金)(村田真)
なかもと真生
会期:2010/03/19~2010/04/11
大原美術館[岡山県]
大原美術館は、写真や映像作品、パフォーマンスやイベントなどの分野で活動するアーティストに注目したAM倉敷(Artist Meets Kurashiki)という企画を継続的に開催している。その第6弾として京都在住の作家、なかもと真生が紹介された。屋外と屋内の2箇所に、電化製品や木材などの廃品を銀色に塗装した、パソコンのマザーボードをイメージさせる巨大なインスタレーション。倉敷市水島地区での2年にわたるリサーチをもとに、同地区で収集された廃材を用いて制作された作品は、土地の歴史の物語であることも容易に想像できる。驚いたのは一緒に展示されていた構想メモやアイデアスケッチの数々。ぎっしりと細かく書き込まれたその量がまずすごい。全部をたどって見るのが難しいのだが、作家のキャラクターと努力は一目瞭然。作品との関連を示す簡単な解説があればより理解も深まったかもしれず、やや惜しい。
[写真=屋外展示風景]
2010/04/02(金)(酒井千穂)