artscapeレビュー

2010年05月15日号のレビュー/プレビュー

巧術

会期:2010/04/02~2010/04/07

スパイラルガーデン[東京都]

出品作家は、中村哲也、須田悦弘、カンノサカン、あるがせいじ、桑島秀樹……。彼らの名前と作品を知らない人にはなんのことかさっぱりだが、知ってる人にはそれなりの共通イメージが浮かんでくるはず。そう、巧みな術、みごとな手わざ。それにしてもレントゲンヴェルケの作家が多いなあと思ったあなた、正解。同展のキュレーターを務めるのはレントゲンの若旦那、池内務なのだ。会場には、池内好みのツルツルテカテカの手づくりハイテク製品がシャキーンと並ぶ。でも、内海聖史はちょっと違う気がしないでもない。

2010/04/07(水)(村田真)

明るい上映会

会期:2010/03/30~2010/04/11

企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]

東京・四谷のギャラリー、明るい部屋の「一周年記念」ということで開催されたスライドショー企画。同ギャラリーのメンバーである秦雅則、遠矢美琴、三木義一、小野寺南のほか、「これまで当ギャラリーの展示やワークショップに参加してくださった若手作家」(エグチマサル、中島大輔、古田直人、元木みゆき、渡邊聖子など)24名の作品を、A、B、C、Dの4つのグループに分けて連続上映している。全部見ると2時間近くなるのだが、けっこう面白い作品が多かったのでつい最後まで見てしまった。映像を一コマずつ流していく純粋なスライドショーもあるが、動画と組み合わせたり、音を入れたり、画像処理をしたりと、けっこう手の込んだものが多い。パソコンでの入力、出力や、プロジェクターの精度も上がってきているので、このような企画が簡単に成立するようになってきたということだろう。
ただ、作りやすく、発表しやすくなっているということは、ただの映像の垂れ流しになる危険も増しているということだ。実際に退屈きわまりなく、見続けるのが苦痛になってしまう作品も少なくなかった。逆にきちんとコンセプトを立てて作り込んでいったり、奇想天外なアイディアを膨らませたりしていけば、かなり面白くなる可能性もある。前者の代表がスライドショーという枠組みを逆手にとって、10分間同じ岩の写真を上映し続けた渡邊聖子の「否定」、後者の代表があまりにも不穏当過ぎて、ここでは詳細を書くことができないほどの破天荒な魅力にあふれる古田直人の「SCOTCH Magnetic Tape」ということになるだろう。特に古田の作品には度肝を抜かれた。彼の秘められた才能が思いがけないかたちで爆発している。

2010/04/08(木)(飯沢耕太郎)

木村恒久「キムラ・グラフィック《ルビ》展」

会期:2010/03/29~2010/04/10

ヴァニラ画廊[東京都]

普段はフェティッシュ/エロティシズム系の写真やイラストを中心に展示している東京・銀座6丁目のヴァニラ画廊で、やや珍しい展覧会が開催された。木村恒久は1960~64年に日本デザインセンターに所属するなど、戦後の日本のグラフィック・デザインの高揚期を担ったひとりだが、同時に「国家」「戦争」「イデオロギー」「都市」などをテーマにした、近代文明を痛烈に批判するフォト・コラージュ作品でも知られていた。今回の「キムラ・グラフィック《ルビ》展」では、まさに1930年代のジョン・ハートフィールドらの政治的、批評的なコラージュの流れを汲む、70~80年代の切り貼りによるフォト・コラージュ作品に加えて、60年代のクールでポップなグラフィック、ポスターなども展示されており、2008年に亡くなったこの過激なデザイナーの全体像が浮かび上がってくるように構成されていた。
だが、木村の真骨頂といえるのは、理知的な文明批判というだけではなく、どこか土俗的、魔術的な「情念」の世界にもきちんと目配りしていたことではないだろうか。1984年の舞踏集団「白虎社」のポスターの、どろどろとした百鬼夜行的なイメージの乱舞から見えてくるのは、彼が地の底から湧き上がってくるような土着の神々(俗神)のエネルギーの噴出に、大きな共感を寄せていたということだ。木村のユニークな仕事は、日本の写真・デザインの沈滞ムードを吹き払うひとつの手がかりになっていくかもしれない。

2010/04/09(金)(飯沢耕太郎)

松岡一哲+川島小鳥 写真展「未来ちゃん」

会期:2010/04/08~2010/04/25

THERME GALLERY[東京都]

テルメギャラリーの「5ケ月連続2人写真展」の最後に開催されたのは、ギャラリーの主宰者のひとり、松岡一哲と、最近ポートレイトを中心に注目を集めはじめている川島小鳥の「未来ちゃん」。「未来ちゃん」というのはモデルになっている女の子の名前ではなく、「未来」のある子どもということだった。
松岡が撮影している岐阜のピアノ教室でバレエの練習をする「いおりちゃん」(ちょっと北朝鮮の女の子のようだ)も悪くないのだが、なんといっても川島撮影の佐渡島の「つばさちゃん」の存在感が際立っている。ぶっとい眉にリンゴのほっぺ、鼻を真っ赤にして青ばなを垂らすような女の子は、いまどきあまり見かけないのではないだろうか。昭和レトロチックな家と佐渡の寒々とした自然環境を、縦横無尽に行き来する野生児ぶりには目覚ましいものがある。子どもは本来、人間と動物と魔物のちょうど中間あたりの存在だと思うが、都会ではそういう子を見かけるのも稀になってきた。「つばさちゃん」はこうあってほしいという子どもの未来像の、ひとつのかたちを示しているように思う。川島のカメラワークも、何かに取り憑かれているように冴えわたっている。
なおテルメギャラリーから出版されている「THERME BOOKS」の第5弾として、川島小鳥『未来ちゃん』も同時刊行された。B6判の小ぶりな写真集だが、しっかりした造りでなかなかいい。

2010/04/09(金)(飯沢耕太郎)

レゾナンス 共鳴──人と響き合うアート

会期:2010/04/03~2010/06/20

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

昨年春開催の「インシデンタル・アフェアーズ」展に続く、第二弾の美術展。「レゾナンス(共鳴)」をテーマに、人が生きるうえで必然的に抱く思い、「生と死」「喜び」「悲しみ」「愛」「憎しみ」「笑い」などを20名のアーティストのさまざまな作品によって紹介する。作品ではなく、観る者と作品の関係を指し示している今展のテーマ自体も興味深く、有名なアーティストから若手の作品まで、表現手法も多岐にわたる作家の展示構成も前回に増して見応えがある。ただ、この館特有の空間のつくりや照明の影響のせいだが、作品自体の味わい深さを充分に堪能するまでには至らなかったものもあったのが惜しい。しかしながら、丁寧に工夫、熟考されたものであるのが良く解るし、それぞれの意味や視覚的な対比から作品を楽しめる点も面白い。美術に日頃あまり馴染みのない人にこそ足を運んでほしい展覧会だと思った。

2010/04/09(金)(酒井千穂)

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