artscapeレビュー
2010年12月15日号のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2010年12月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
科学と芸術の出会い メディア・アート創世記
著者の坂根厳夫は、1960年代よりジャーナリストとしてメディア・アートを紹介してきた教育界の第一人者。著者とエッシャー、岩井俊雄などの表現者たちとの交流を収録。アナログからデジタルへその波を越えた著者ならではの視点から具体的に境界領域アートの半世紀にわたる歴史をたどる。
キャラクター文化入門
オタク文化が一般に浸透するとともに、地方自治体が顧客層の開拓としてキャラクターを採用するなど、キャラクターへの関心が高まっている。現代のキャラクターの受容は、商品としての流通形態やメディアでの展開、政府のコンテンツ政策にまで多様化している。本書は、個々のキャラクターの歴史的系譜や人気の背景などを分析した文化論の立場から、現在のキャラクターの受容について、文化・ビジネス・メディアを切り口に明らかにする。
肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈
高度経済成長による都市の肥大化、マスメディアの浸透により社会が激変した1960年代の日本前衛美術におけるパフォーマンスを検証。60年代の安保闘争とその敗北から、アングラ文化などに、美術家たちはどのように反応し、行動し、忘却されてきたのかを、公共空間での反体制的な文化を体現するパフォーマンスを検証し、アナーキズム傾向の文化的・政治的な文脈に位置づけようと試みる。
前衛下着道 鴨居羊子とその時代
鴨居羊子は新聞記者から下着デザイナーとなり、日本で初めてナイロン素材を使った下着を制作した人物。本書は川崎市岡本太郎美術館にて2010年4月17日〜7月4日まで開催されていた「前衛下着道──鴨居羊子とその時代岡本太郎・今東光・司馬遼太郎・具体美術協会 展」にあわせて編集された一冊。下着と身体の概念を変えた、「下着ぶんか論」を収録。
泉太郎 こねる
2010年11月2日〜27日まで神奈川県民ホールギャラリーにて行なわれた「泉太郎 こねる」展カタログ。国内のみならずアメリカ、スイス、フランス、韓国、タイなど世界中で斬新な作品を発表し、気鋭の映像作家として注目を集める泉太郎。これまでの泉の作品を191ページにわたり収録。
2010/12/15(artscape編集部)
プレビュー:長井朋子 展「木枯らしと、こんこ」
会期:2010/12/17~2011/02/05
小山登美夫ギャラリー京都+TKGエディションズ京都[京都府]
子鹿や熊、猫などの動物や架空の生きもの、少女といったモチーフを色とりどりに画面に散りばめ、空想的世界を描く長井朋子の個展。下描きすることなく制作される作品の画材は、パステルや色鉛筆、水彩、油彩など描く対象に合わせて選ばれる。壁画やインスタレーションによっても構成されるという今展、さまざまなマチエールが響き合う空間でどんな物語世界が広がるのか、楽しみだ。12月17日にはアーティストトークも開催される。
図版=長井朋子《ririan》2010
oil, acrylic on canvas、130.2×194.2
cm
©Tomoko Nagai Courtesy of Tomio Koyama Gallery
2010/12/15(水)(酒井千穂)