artscapeレビュー

2010年12月15日号のレビュー/プレビュー

横尾美美「Painting」

会期:2010/10/18~2010/11/13

南天子画廊[東京都]

食べ物を主要モチーフとした絵画。絵画といっても画面に食べ物の模型やフィギュアやシロップの瓶などがくっついてるし、額代わりの白い箱に入ってるのでオブジェっぽい。絵そのものは点描風で、テクニックは父上(忠則)よりはるかに上。なんてことを書くとしかられるだろうなあ。

2010/11/02(火)(村田真)

赤坂有芽「Miniature garden」

会期:2010/10/25~2010/11/06

ASK?art space kimura[東京都]

写真をもとにしたアニメ。暗いギャラリー内の壁にモチーフの鳥や魚や蝶の映像が白く浮かび上がり、まるで夢でも見ているよう(名前の有芽は「ユメ」と読むらしい)。とくに地下の直角に交わる壁2面を使って、一方の壁からもう一方の壁へと移り変わる映像が秀逸。これは現代の「変身物語」だ。

2010/11/02(火)(村田真)

松山賢「からっぽの偽物」

会期:2010/10/23~2010/11/27

ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート[東京都]

大作が3点。いずれもエロかわいい女の子を中心とした絵だが、それぞれ背景が違う。ひとつはキャンヴァスの代わりに板を使い、木版画のように背景の花模様を彫っている。その花模様は女性のはだけた身体にも彫られ、まるで刺青のようだ。あとの2点は背景が抽象画で、ひとつはモーリス・ルイスのような絵具の垂れ流し風、もうひとつはゲルハルト・リヒターみたいにペインティングナイフでこすったみたいな表現主義風。リヒターは具象と抽象を同時に描き分けたり、抽象画を具象的に描いたり(その逆も)して絵画を散々もてあそんできたが、そのリヒターを女の子がもてあそんでる感じ。でも松山はやっぱり抽象より具象のほうがウマイな。

2010/11/02(火)(村田真)

高橋尚子「景色は私に吸いつくか」

会期:2010/11/01~2010/11/07

PLACE M[東京都]

高橋尚子(1984年生まれ)の個展会場の挨拶文に、なかなか面白いことが書いてあった。彼女は学生の頃に、冬の牧場で働いていたことがあった。子牛に大きな哺乳瓶で体温まで温めたミルクを与える役目だ。ところが、生まれたての子牛はそれをなかなか餌だと認識できない。
「その人工的な乳頭に、子牛が吸いついてくれるまでの数分間のやり取りのなかに、どこか普遍的な関係性の法則が見てとれる気がした。カメラを手にして、そこに景色があるとき、この時の感覚が、再び想い起こされたのだった。」
なるほど、と思う。たしかに被写体を前にしてシャッターを押す時の駆け引き、やり取りは、子牛に人工的な乳頭を吸わせる時の感覚とよく似ているのではないだろうか。そこには「普遍的な関係性の法則」があるような気がする。高橋のスナップ写真にも、彼女の認識力の高さがよく表われている。スナップショットの撮影には単なる運動神経だけではなく、ここでシャッターを切るという確信が必要になる。高橋にはそのスナップシューターとしての資質がある。その結果として、彼女の写真はほのかなユーモアと悪意がじわじわと滲み出る、実に味わい深いものになっている。
どことなく、画面の全体にミルク色のねっとりとした霧がかかっているようにも見えるのだが、気のせいだろうか。

2010/11/04(木)(飯沢耕太郎)

からす頌──6人展

会期:2010/10/27~2010/11/10

渋谷メアリージェーン[東京都]

渋谷に出てランチしようと思ったら、行きつけのラーメン屋もつけめん屋も行列。そのラーメン屋(冷やし担々麺がお気に入り)の裏のメアリージェーンて店で大谷俊一や藤原彩人ら6人展をやってるのを思い出し、そこで食うことにする。壁にカラスを描いた小品が数点かかっているが、ほかに客もいるので立って見るわけにもいかない。そうこうしてるうちに注文したアサリのパスタが出される。とくにウマイわけでもないが、むき身のアサリはぷりぷりしてるし、妙な調味料など使ってない素朴な味で好感がもてる。いまどき1,000円は安くないが、サラダ、デザート、エスプレッソがついてるので、まあ納得か。結局メシ食いに行っただけだった。

2010/11/05(金)(村田真)

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