artscapeレビュー

2013年11月15日号のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013 記者座談会 上・下(『中日新聞』2013.10.28)

トリエンナーレの終了翌日とその次の日、二日間にわたって、『中日新聞』に、五名の記者による総括の座談会が掲載された。地元の批判的な意見もあることを伝えようとしたものと思われるが、編集がバランスを欠き、全体としてトリエンナーレの酷評に近い印象を与えるものだった。むろん、作品や内容についてはあれこれ言われてきたし、今回のようなテーマだと、そういう賛否が出るのは当然だと思っていたが、残念ながら、この座談会は事実誤認、取材不足、個人的な印象による決めつけが多く、看過できない。特に記者E(個人名は特定されていない)は、著しく誠意を欠いたこき下ろしを繰り返し、展示のレビューを装った国際芸術祭の全否定である。ゆえに、筆者はtwitterの連投を通じて、反論を行ない、togetterでも5万に近い閲覧数となり、大きな反響を呼んだ(http://togetter.com/li/583137)。またパフォーミングアーツ統括プロデューサーの小崎哲哉も、10の事実誤認を指摘する「中日新聞5記者への公開質問状」を「Realtokyo」のウェブサイトに掲載した。なお、その後、筆者は『中日新聞』に反論を書けるということで寄稿したが、書き直しを要求され、向こうの要望に合わせて、反論を修正するのもおかしいと考え、原稿の掲載をあきらめた。

2013/10/29(火)(五十嵐太郎)

代官山インスタレーション2013

会期:2013/10/13~2013/11/04

代官山界隈[東京都]

代官山界隈の公共スペースに作品を設置するコンペ。選ばれた9組がヒルサイドテラスを中心に作品を展示している。2階のテラスから直径1メートルはありそうな岩塊(フェイク)を鎖で吊るした北村達也の《もの─ほし》は、インパクトこそあるものの、そのインパクトは一瞬で終わり持続しない。ヒルサイドテラスの中庭に巨大な家具セットを置いたスタジオウエストの《小さくなる》は、つくりが大ざっぱすぎて家具に見えず、自分が小さくなった気分になれない。でも向こうに家具屋が見えるロケーションは買いたい。坂道の石垣や塀の上に小さな人形や家を置いた井上岳と高山将太の《小さな大きな山》は、もっと数があればおもしろかったが、盗まれたり壊れたりしかねないのが野外展示の難しいところ。大谷石の石垣の穴や溝に草花を植える松本恭吾の《植物を植える、代官山をひそかに改造するプロジェクト。》は、タイトルどおり密やかながらも草の根的に街を変えていく可能性があり、今回もっとも高く評価したいプロジェクトだった。んが、残念ながら半数の花はしおれていて、街の改造にはほど遠かった。んが。

2013/10/30(水)(村田真)

中岡真珠美「緩衝──バッファ」

会期:2013/10/11~2013/11/03

アートフロントギャラリー[東京都]

どの絵も画面の中央が四角い余白になっている。周囲には抽象化された景色が描かれ、余白の下には支柱のようなものが伸びているので、ちょうど風景のなかの看板や標識が白く抜かれてるかたちだ。その余白はキャンバス地のままなので、絵の中央に白いキャンバスが置かれているようにも感じる。それはまた、絵画空間という異次元の世界からさらに奥の異次元へと誘う入口のようにも見える。でもマイナスのマイナスはプラスになるように、キャンバス地のこの矩形は実は絵画の世界から現実世界へ帰還する出口ともいえるのだ。

2013/10/30(水)(村田真)

福井直子「夢を見るライオン」

会期:2013/10/25~2013/11/06

ギャラリースピークフォー[東京都]

福井といえば部屋全体を絵画空間に変えるインスタレーションが印象的だが、今回は動物や風景を色彩豊かに描いた油彩画に、ビーズやスパンコールを編み込んだタブロー約50点を展示している。鮮やかなピンクやグリーンで輪郭を強調しているせいか、ウォーホルをはじめとするポップアートを思い出す。愛すべきタブローだが、しかし個人的には絵画インスタレーションを見たいぞ。

2013/10/30(水)(村田真)

第45回 日展

会期:2013/11/01~2013/12/08

国立新美術館[東京都]

書(篆刻部門)の不正審査疑惑に揺れる日展のプレス内覧会に初めて出席した。といっても午後から授業があったため記者説明会には出られず、内覧会のみ。記者説明会は紛糾しただろうか。とりあえず会場をひとめぐりしてみたが、ずいぶん閑散としてるなあ。もう少し騒然とした空気を期待してたんだけどね。作品は相変わらず、ほんと十年一日のごとく変わらない。洋画の中山忠彦は着せ替え人形のごとく毎年服を替えただけの奥さんを何十年も描いているし(しかもほとんど年をとらない!)、藤森兼明も金のイコンを背景にした女性像を毎年出している。ほかにも塗師祥一郎は雪景色、守屋潤吉は敦煌の壁画、工藤和男は地中海の漁港、金山桂子はガラス器の静物画の専門画家だ。ここまで主題もスタイルも固定してしまえばもう安泰。なにしろ進歩・発展は日展の敵だからな。ところで『日展アートガイド』の書のページには、驚いたことに読売新聞編集委員で長く美術記者を務めた菅原教夫氏が巻頭文を書ているではないか。その書のスキャンダルを朝日新聞がすっぱ抜いたんだから、菅原さんも形なしだな。

2013/10/31(木)(村田真)

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