2019年09月01日号
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artscapeレビュー

2015年03月15日号のレビュー/プレビュー

フィリップ・スタルク《スーパードライホール》

[東京都]

浅草へ。キリンプラザ大阪がなくなった現在、フィリップ・スタルクがデザインしたスーパードライホール(1989)が残っていると安心する。手前の高速道路を走る自動車が、テカテカの湾曲した黒い壁面に映り込むのが興味深い。また反対側の壁面は、スカイツリーが映る。バブルのときだからこそできた建築なので、時代の証言者として貴重な存在だ。

2015/02/14(土)(五十嵐太郎)

Grow up!! Artist Project 2014 報告会

会期:2015/02/13~2015/02/19

アサヒ・アートスクエア[東京都]

GROW UP!! ARTIST PROJECT2014の報告会へ。大崎晴地の障害者の家プロジェクトは、バリアフリー化に向かうのではなく、その特殊条件をポジティブに読み替えて、既存の枠組みを外し、新しい建築的な提案を行なう。模型やドローイングが並び、建築畑の人にも興味深い内容である。次に毛利悠子の展示を見る。5階は、地下鉄の天井からの漏水に対する駅員のブリコラージュ的処置を記録したモレモレ東京のフィールドワークの成果を紹介する。4階はキッチンとトイレを使い、人工的に水漏れ現象を起すが、ワークショップで、参加者と水漏れ対策を行なうという。島貫泰介を司会に迎え、「即興建築としてのモレモレ東京」のトークを行なう。通行人の邪魔をせずに、天井からの漏水を近くの柱や壁に誘導し、床に帰着させるというシンプルな条件だが、その中間のデザインは実に多様だ。モレモレ東京の宝庫と聞いて、帰りに浅草の古い地下街(1955)に寄ったが、なるほど、すごい密度で存在する。これに対応する担当の人の、野生の思考というか、知恵がまた面白いらしい。

写真:上から、大崎晴地「障害者の家プロジェクト」、毛利悠子の展示、モレモレ東京のフィールドワーク、浅草の地下街

2015/02/14(土)(五十嵐太郎)

御苗場 横浜2015

会期:2015/02/12~2015/02/15

パシフィコ横浜[神奈川県]

総入場者数6万5千人を超えるという日本最大のカメラ・写真の総合イベント「CP+2015」。ほとんどは撮影、プリントの機材のブースなのだが、その一角で隔月刊の写真雑誌『ファットフォト』を刊行し、各種の写真講座を企画しているCMSが主催する「御苗場 横浜2015」が開催されていた。
今回で16回目になる「御苗場」は、まだ初心者といっていい撮り手を中心とした写真作品の発表の場であり、料金を払って縦横数メートルのブースを借り、そこに4点以内の作品を展示するというシステムになっている。今回のブースの数は一般用、学生用合わせて300余りであり、会場をびっしりと埋め尽くす様はなかなか壮観だった。CMSを主宰するテラウチマサトをはじめとする6名のレビュアーが選ぶ賞もあり、「自分の未来に苗を植える場所」、「日本最大級の参加型写真展」として順調に成長しつつあるといえるだろう。
2月14日に会場内で開催されたトークイベントに参加したので、展示された写真をざっと見たのだが、たしかに数年前に比べて技術的にも、内容的にも作品のレベルは格段に上がっている。ただ当然ながら、写真家として突出した存在感を発している出品者はいなかった。気になるのは、作品が均質化していることで、たしかに風景、スナップ、ポートレート、私写真、演出写真と表現の幅は広いのだが、心揺さぶるような不穏な空気感を発しているものはほとんどない。気持ちよく目に飛び込んでくる、感じのいい写真ばかりがこれだけ並んでいるのは、どこか不気味でもある。ここでの展示をきっかけにステップアップしていく、その踏み台として利用していってほしいと思うが、「その次」のステージをきちんと準備していくことが、課題となるのではないだろうか。
ウェブサイト:http://www.cpplus.jp/

2015/02/14(土)(飯沢耕太郎)

佐久間里美「○△□」

会期:2015/01/24~2015/03/08

POETIC SCAPE[東京都]

東京・六本木のIMA galleryで開催された「LUMIX MEETS JAPANESE PHOTOGRAPHERS#2」展(2015年1月21日~29日)に参加するなど、このところ精力的に作品を発表している佐久間里美の個展が、東京・目黒のPOETIC SCAPEで開催された。ただし、出品作の「○△□」は既発表の作品であり(15点中8点は新作)、その意味での新鮮さはない。デジタルカメラで「エレクトリカルな人工光」の乱舞を撮影して、新たなコンセプトを展開した「LUMIX MEETS JAPANESE PHOTOGRAPHERS#2」展の出品作「Snoezelen Landscape」と比較すると、むしろ表現意識が後退しているように見えてしまう。ただ、都市風景を色面の連なりとして再構築していく「○△□」が、若い世代の表現意識を典型的に指し示す作品であることは間違いない。今後も彼女の代表作として評価を高めていくのではないだろうか。
ところで、ちょうど海外に出ていたので見過ごしてしまった「LUMIX MEETS JAPANESE PHOTOGRAPHERS#2」展だが、佐久間の他に加納俊輔、水谷吉法、山崎雄策、Kosuke、山本渉が出品していた。たしかに、力のある写真作家をフィーチャーしているのだが、カタログを見る限り、どうしても小綺麗に小さくまとまってしまっている印象を拭いきれない。表面性へのこだわりや軽快な画像構築への志向は、たしかにこの世代の特徴といえるのだが、これだけ「切っても血が出ない」貧血気味の作品が並ぶと、これでいいのかと思ってしまう。なお、この展覧会はもともと「TOKYO 2020」というタイトルで企画されていたのだが、東京オリンピックに関連してJOCが商標登録しており、使えなくなってしまったのだという。何とも後味が悪い顛末だが、それ以上に2020年の「日本写真」がこの程度のものとはとても思えない。

2015/02/14(土)(飯沢耕太郎)

木下歌舞伎「黒塚」

会期:2015/02/11~2015/02/15

京都芸術センター 講堂[京都府]


初演は2013年だが、今回改めて全国ツアーとなった作品。高揚感のある展開と登場人物の軽妙な描き方、口語を交えた台詞の構造がいつも通り痛快。KYOTO EXPERIMENT 2014での上演作品「三人吉三」で体験した武谷公雄の演技を再び見た。「三人吉三」では初老の仁義ある男、本作では鬼婆と全く異なる役柄ではあるが、独特の官能的なしわがれた声と、ほとばしる汗、この役者の味わい深さはタダモノではない。見た目に年齢不詳、と思って調べてみると、1979年生まれと知ってさらに驚いた。

2015/02/14(土)(松永大地)

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