2019年10月15日号
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artscapeレビュー

2015年03月15日号のレビュー/プレビュー

黄金町通路:記録

会期:2015/02/07~2015/03/22

高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]

黄金町にmujikoboを構える倉田拓朴と、昨年黄金町バザールに参加するため滞在・制作していたフィリピンのポール・モンドックの2人展。ふたりともモノクロ写真で(モンドックは数点カラーが混じってる)、倉谷は黄金町の住人のポートレートを撮り続け、モンドックは横浜を歩き回って風景をスナップしている。倉谷が定点観測とするなら、モンドックは遊歩観測だ。作品も倉谷が選び抜いた大判のポートレートをドンと展示しているのに対し、モンドックはその隙間を埋めるようにスナップ写真を並べている。質より量か、量より質か。この対照的なふたりが出会う瞬間があった。倉谷が黄金町で屋外撮影している場面を、たまたま通りかかったモンドックが撮影したのだ。そのとき撮った2点の写真がこの展覧会の白眉であると同時に、黄金町の目指す方向性を暗示しているように思えた。

2015/02/17(火)(村田真)

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第18回 岡本太郎現代芸術賞展

会期:2015/02/03~2015/04/12

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

似たような絵ばかり選ばれる絵画コンクールが横行する昨今(審査員の顔ぶれが似たり寄ったりだから仕方がない)、もっとも刺激的でもっともクレージーな現代美術のアワードといえば、岡本太郎の名を冠したこの賞しかないでしょう。なにはともあれ目立ちゃあいいみたいな姿勢は、現代美術の基本ですからね。いきおい光ったり動いたり音が出たりするインスタレーション系が多くなり、絵画は絶対的に不利になる。んが、今回は絵画(しかもベースは日本画)で岡本敏子賞を取った人がいる。昨年、東北芸工大の卒展に《日本の美術を埋葬する》を出して注目を浴びた久松知子だ。ここでは同作品に《日本画家のアトリエ》を加えた2点を出品。前作がクールベの《オルナンの埋葬》の構図を借りていたのに対し、新作は同じくクールベの《画家のアトリエ》を借用し、近現代の日本画家40人近くのポートレートとその作品を画中画として描いている。岡倉天心、横山大観、平山郁夫らは前作にも登場したが、針生一郎、李禹煥、中村ケンゴらは初登場だ。のみならず、ニコラ・ブリオーや『すばる』2014年10月号もあって必要以上に目配りが利いている。これは文句なく力作。ちゃっかり審査員もふたり入れてるし。これを上回る岡本太郎賞は、乗用車を石焼き芋の販売車に改造し、屋根にハデなデコラを載せたヨタの《金時》。実際この車で焼き芋屋をやってるらしいのだが、残念ながら展示は自動車本体がなく(搬入できなかったのか?)、芋の箱を積み上げてイルミネーションの一部を置いただけ。活動はすこぶるおもしろいけど、この展示じゃあヤンキーな過剰さが伝わってこない。車ものではほかに、ランドセルを持たされやすい子の代わりにランドセルを運んでくれる自転車をつくった藤村祥馬《どれいちゃん号》、屋根のついた宮型霊柩車のモデルに花柄の毛布を貼りつけた江頭誠《神宮寺宮型八棟造》があり(どちらも特別賞)、観客の人気投票ではヨタや久松を抑えて藤村が1位、江頭が3位に入っていた(2/19現在)。人気と賞とは必ずしも連動しない。個人的に好きだったのは、四井雄大のつくった陶器を菊谷達史が油彩で描いた《太陽と陶》。陶器自体も絵画自体もどうってことないが、モデルとその絵を同時に見せられるとちょっとドギマギする。この気分はなんだろう?

2015/02/19(木)(村田真)

中谷ミチコ展/漕ぐ、彫刻

会期:2015/01/22~2015/03/15

横浜市民ギャラリーあざみ野エントランスロビー[神奈川県]

エントランスロビーのショーケースのなかに1点、中谷ミチコの作品が置かれている。長さ1メートルくらいの舟のかたちをした白い彫刻だが、舟本体がなく、その表面にへばりついた人や動物だけが残ったような、あるいは舟に施されたレリーフだけを切り離したような感じ。かつてクリストや赤瀬川原平が試みた梱包芸術において、あるモノを布で覆い隠すことによって逆にその形状からモノの正体を浮かび上がらせたように、中谷は人や動物のかたちづくる中空の形状から舟の不在を意識させる。その舟はやっぱりノアの方舟でしょうね。だとすれば、いまこそノアの方舟の教訓を思い出せというメッセージなのか。まあそこまで意味づけするとクサイけど。

2015/02/19(木)(村田真)

石川直樹 NEW MAP──世界を見に行く

会期:2015/01/31~2015/02/22

横浜市民ギャラリーあざみ野[神奈川県]

17歳の夏休みに旅行し、作者の目を世界に向けさせることになったという「INDIA」に始まり(ただし写真はその後のもの)、北極から南極までを踏破した「POLE TO POLE」、それぞれの風土に根ざした世界中の建築を撮り歩いた「VERNACULAR」、日本を取り巻く南西諸島から北方の島々までを旅した「ARCHIPELAGO」、世界最高峰エベレストに2度目の登頂を果たした「8848」など、石川直樹の代表的な写真シリーズを展示。既存の地図に頼らず、自分の足と目で未知の地を歩いて写真に撮り、自分なりの世界地図を描いていこうという姿勢がタイトルの「NEW MAP」に示されている。しかしこういうのを見るとつい、「写真を撮るために旅に出るのか」「カメラを持たずに旅行できないのか」などと意地悪く思ってしまうが、石川にいわせれば旅と写真は最初から分ちがたく結びついているそうだ。たとえば登山したとき写真を撮らなければ登頂した証にならないように、旅と写真はもともと不可分の関係にあるという。そんな石川のインタビューや解説が載ってるリーフレット(マップみたいに開くと大判のエベレスト写真が現れるスグレもの)がタダでもらえる。しかも入場無料。こういう好企画はもっと宣伝したほうがいい。

2015/02/19(木)(村田真)

旅をするまなざし

会期:2015/01/31~2015/02/22

横浜市民ギャラリーあざみ野[神奈川県]

「石川直樹展」の上のフロアで同時開催されているコレクション展。19世紀の観光写真やステレオ写真、時代がかったカメラセットや自転車に取りつけられたカメラなど、約200点を紹介。なるほど、これを見れば旅と写真が昔から深い関係にあったことがわかる。世界は写真に撮られることを待っていた、なんて思わずいっちゃいそう。でも19世紀にトランクほどもある写真機一式を携えて世界を旅しようなんて人は大金持ちだったはずだから、撮る側は支配し収奪する側でもあったわけだ。なるほど、写真を「とる」というのはそういうことでもあるのか。

2015/02/19(木)(村田真)

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