2019年12月01日号
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artscapeレビュー

山本昌男「浄」

2015年02月15日号

会期:2015/01/14~2015/02/07

Mizuma Art Gallery[東京都]

2009年以来というから、山本昌男の個展もひさしぶりだ。山本は日本よりもむしろアメリカやヨーロッパで評価の高い写真作家で、モノクロームの小さなプリント(時には微妙な調色が施される)を、壁面にまき散らすようにインスタレーションする作品で知られている。写真に写っているのは、身辺のこれまた小さな出来事が多いが、それらの付けあわせ方に独特の繊細で軽やかな美意識が働いており、「俳句的な表現」と評されることも多い。
今回のMizuma Art Galleryでの展示では、その山本の作品世界がかなり大きく変わりつつあることに驚かされた。「浄」シリーズの被写体は「作家の目に留まった路傍の石や木の根」であり、それらが黒バックで、クローズアップ気味にしっかりと撮影されている。複数の写真が響きあうように配置されていたこれまでの作品と比べると、一点一点の自立性が高く、しかも裏打ちされたパネルやフレームに入れる形で、それぞれ独立して展示されている。山本の被写体を見つめる眼差しも、緊張感と強度を孕んだものになってきていた。奥の部屋は、写真に鉄の鎖、鏡などを配したインスタレーションの展示だが、それらもシンプルで重々しい印象を与える。
彼が今後どんな風にこのシリーズを展開していくのかは、まだわからないが、新たな領域に踏み出していこうとする強い意欲を感じた。むろん以前の作風との融合・合体も考えられると思うので、もう少し、どうなっていくのかを見守っていきたい。

2015/01/20(火)(飯沢耕太郎)

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