artscapeレビュー
幻想絶佳:アール・デコと古典主義
2015年02月15日号
会期:2015/01/17~2015/04/07
東京都庭園美術館[東京都]
1933年に竣工したアールデコ調の朝香宮邸を前身とする庭園美術館ならではの企画展。アンリ・ラパンの設計した建築や壁画、ルネ・ラリックによるガラス工芸など、館内の装飾を見せるだけでも展覧会として成り立つ。こんな美術館、日本には少ないでしょうね。新館には、1920-30年代のアールデコの画家たちによる古典主義の絵画が並ぶ。ジャン・デュパ、ルイ・ビヨテ、ロベール・ブゲオン、ジャン・デピュジョル、アンドレ・メールなど、ほとんど知らない名前ばかり。多くはキュビスムをいったん通過したのだろう、古典的なテーマの裸体画なのに妙に幾何学的なクセがある。だいたいこの時代はモダンアートの流れでいうと抽象かシュルレアリスムで片づけられがちなので、こんな古典主義がはびこっていたというのは驚きだった。はたして彼らの作品は前衛芸術に反発する保守勢力の趣味を反映した美学だったのか。というのも、これらの作品がナチス・ドイツに愛されたアドルフ・ツィーグラーやヨハン・シュルトらの古典主義絵画とどこか通じているような気がするからだ。
2015/01/16(金)(村田真)