artscapeレビュー
絵の彼方「川北ゆう/山本彩香」
2011年01月15日号
会期:2010/12/01~2010/12/11
京都精華大学 ギャラリーフロール[京都府]
油絵の具や水性のインクと水を用い、揺れ動いた線の痕跡による作品を展開している川北ゆうと、意図とは無関係に現実を曝しだす写真の特性(とその違和感)に惹かれて制作を行なっているという山本彩香の二人展。川北の平面作品と山本のエストニアで撮影された写真、まったく表現方法は異なるふたりだが、どちらにも透き通った空気感や湧き水のような清涼感が感じられる。といっても、移りゆく時間や、生々しい身体と皮膚の感触を連想させるそれらの画面の緊張感は、感情の動きをも示すような色のリズムをともなっているためか、冷たく固い印象はあまりない。感覚や自然現象のなりゆきにまかせる無作為と作為の間を漂うような制作法で、不安定な要素を多く持つ川北の作品と、不自然という違和感で被写体の美しさをあぶり出すように表現する山本の写真のマッチングは実に繊細な織物の模様のように深遠な味わいがあるものだった。今後の活動がまた楽しみだ。
2010/12/10(金)(酒井千穂)