artscapeレビュー
石内都 展「ひろしまsix」
2011年01月15日号
会期:2010/11/13~2010/12/18
被爆者が着ていた服や身につけていたものなど、その遺品を撮影した「ひろしま」のシリーズの6回目の展覧会。前日に精華大学で映画『ANPO』の上映とともに開催されたシンポジウムで、石内都さん自身から語られた「ひろしま」の作品をめぐるエピソードやこの制作への決意など、そのときの言葉を思い出し、自分なりに咀嚼しながら作品を鑑賞できたのは有り難い気がする。継ぎ接ぎ部分やすり切れた部分に目をやると、それを着用していた人の生活や風貌にまで想像が膨らんでゆく。古びたものや被爆者の遺品としてそのイメージが誘発されるというのではない。そもそもそのように見えないように撮影、展示されている写真なのだが、実についさっき脱ぎ捨てられ、体温の生々しい温度がまだ残るものを目の当たりにしているような感覚。“そのとき”まで着られていた服の数々が、風化することなく持ち主の個性を掬いあげていくようで、動揺する。奇麗な模様や柄のブラウスや持ち物は、モノと人間との関係も含めつぎつぎと連想を巡らせてやまない。 訪れたのは最終日だったが見ることができてよかった。
2010/12/18(土)(酒井千穂)