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救いのほとけ──観音と地蔵の美術──

2011年01月15日号

会期:2010/10/09~2010/11/23

町田市立国際版画美術館[東京都]

かの瀬戸内国際芸術が「島巡礼」という言葉で表象されがちだったように、昨今の現代アートをめぐる状況は、宗教的なメタファーによって要約できることが多い。聖地を巡礼することによって贖罪なり祈願を神のもとに届けようとすること。そこに現実逃避の側面がないわけではないが、だからといって仏像への広い関心がすべて非現実的な狂騒にすぎないわけでもないだろう。私たちはいま、神や仏といった超越的な存在に救済の願いを仮託せざるをえないほど、生きることに疲弊している。ただし、そうした消耗する生き方というものは、必ずしも現代的な病理の症候ではなく、かつてもいまも、私たちはそのようにして神や仏に依存しながら生きてきたのだ。「ほとけ」をめぐる平面や彫像を展示した本展は、自立した近代的個人という幻想が打ち砕かれてしまったいま、そのような共依存の関係がそれほど悪いものではないということを、静かに語りかけていた。

2010/11/23(火)(福住廉)

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