artscapeレビュー
ファンタスマゴリア
2011年01月15日号
会期:2010/11/19~2010/12/19
ギャルリー宮脇[京都府]
近年、アール・ブリュットを積極的に取り上げているギャルリー宮脇が、刺激的な企画展を開催した。光に満ちた神秘体験を描写するアンティエ・グメルス、異業の妖精たちが浮遊する絵画を描くルジェナ、女性の裸体画の周囲にキッチュな雑貨品を過剰に貼り付ける山際マリ、自然物や既製品、自作の造形物を組み合わせてシュールなオブジェを制作する濱口直巳、細胞増殖を思わせる生々しい作風の平面や立体で知られる玉本奈々をピックアップした本展だ。アール・ブリュットといっても、彼女たちは障害をもつわけではない。美大で学んだ者もいれば、独学者もいる。ステレオタイプなアール・ブリュット観を排し、特定の枠組みや流行とは無縁で、自己探求的な作風を持つ作家を集めたのだ。この選択は、アール・ブリュットを狭義に捉える原理主義者には邪道に見えるかもしれない。しかし、冷静に考えれば言葉本来の意味に忠実だし、アール・ブリュットの可能性をより広げることにもつながるだろう。実際、作品はどれも赤裸々な魅力に溢れ、文字通り“生の芸術”だった。広義のアール・ブリュットをラインアップに加えることで、ギャルリー宮脇の活動は更に速度を増すであろう。
2010/11/24(水)(小吹隆文)