artscapeレビュー

山荘美学「日高理恵子とさわひらき」

2011年01月15日号

会期:2010/12/15~2011/03/13

アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]

自宅アパートのバスルームや階段、キッチンの隅を舞台に、ラクダやヤギ、足の生えたスプーンやはさみなどが動き回り、飛行機が飛ぶ。日常のものごとからインスパイアされた見立ての世界を映像作品として繰り広げるさわひらきと、身近な樹を見上げたときの光景を大画面に描いたモノクロームの絵画を発表している日高理恵子の二人による展覧会。 同館で撮影、制作された最新作も含めたさわの作品8点は、本館の展示室や2階喫茶室のガラスケース、引き出し、窓際など、館のあちこちにそっと隠されるように設置されていた。その作品世界の密やかな楽しさをいっそう魅力的に見せる遊び心にも満ちた空間で素敵だ。百日紅が描かれた日高の5点の絵画が展示されているのは、安藤忠雄建築の新館。天窓の下の円形の空間で、一連の作品の画面に近づいたり離れたり、距離や角度を変えながら見ていると、立体的な奥行きと迫力を感じる。できれば天窓から差し込む外の光とともにあじわいたい空間なのだが、残念ながら訪れたときはすでに空は暗く叶わなかった。 日常を見つめることから表現を展開するふたりの作家の作品と空間それぞれの魅力が発揮された展覧会だと思う。できればもう一度行きたい。

2010/12/15(水)(酒井千穂)

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