artscapeレビュー
小林耕平&core of bells「運送としょうゆとかぐや姫と先生とライオン」
2011年01月15日号
会期:2010/12/18
山本現代[東京都]
映像作品をつくることの多い美術作家・小林耕平がcore of bellsという名のバンドと行なったパフォーマンス。無理難題(「それは閉じています、開いて下さい」など、禅問答に似た、問いの意味自体を問わざるをえない問い)を自ら課し、小林はバンドのメンバーとともにそれを解く。本イベントではバンドの演奏の前に、この会議ともリハーサルともつかない上演が3時間超行なわれた。ビデオカメラは回っているけれども、ことさら意識されることはない。「落としどころ」を求めてしまうのは、パフォーマーの性だろう。けれども、笑いに落とすことはある意味たやすい。「ならば!」と、笑いという落としどころ以外のポイントを探索すれば、迷宮から出られない。そう、そこであらわになるのは、「演じる(遂行する)」ということの内でひとが出会う、多数のありうるコースの存在であり、そこを進む際のパフォーマー個々の性能である。演技の失敗も成功も存在しない、演じることの状態それ自体が賞味される場。そうした場の創造に狙いを定める小林は、広い意味での「演劇」とはなにかをあぶりだそうとしている。後半のバンド演奏では、前半で行なわれた問答の成果が部分的に反映されており、いわゆる「バンド演奏」の範疇を大きく逸脱する、演劇的なパフォーマンスが展開された。ロック、パンク、フォークなどで演奏する身体が示すさまざまな身振りや決めポーズをまるでおもちゃ箱のおもちゃみたいに取り出してはもてあそぶ。ポスト(アンチ)ロックというよりメタロックとでも称すべきcore of bells。実に魅力的なのだが、そもそも演劇的な面のあるロックを参照する分、パッチワークの仕方は奇妙でも個々の落としどころはわかりにくくない。対照的に、謎それ自体に向き合う小林の試みはきわめて特異なものに映った。
2010/12/18(土)(木村覚)