artscapeレビュー
彫刻家エル・アナツイのアフリカ
2011年01月15日号
会期:2010/09/16~2010/12/07
国立民族学博物館[大阪府]
アフリカのガーナ出身で、現在はナイジェリアを拠点に活動するエル・アナツイは、1989年にポンピドゥーセンターで開催された「大地の魔術師」展で一躍脚光を浴び、以後、アフリカを代表する現代アート作家として活動している。しかし、欧米で彼の作品は美術館と博物館の両方で展示されており、西洋的文脈のアートと民族工芸の狭間で宙吊りにされた状態になっているのだとか。非西洋圏のアーティストが多少なりとも直面するこの問題に対して、美術史と文化人類学双方の視点からアプローチしようと試みたのが本展だ。ただ、実際の展示を見ると、少なくとも私にはオーソドックスな美術展に見えた。確かに彼の作品の背景となっているアフリカの美術工芸品も共に展示されているが、だからといって上記の問題に踏み込んでいると言えるのだろうか。意識し過ぎると却って西洋美術史の文脈に取り込まれてしまうことを危険視したのかもしれないが、もう少し踏み込んでほしかったというのが本音だ。
2010/12/04(土)(小吹隆文)