artscapeレビュー

蜷川実花「noir」

2011年01月15日号

会期:2010/11/27~2011/12/25

小山登美夫ギャラリー[東京都]

Taka Ishii Galleryの上の階の小山登美男ギャリーでは、同じ日に蜷川実花展もオープンした。芸能人関係の花輪の多さが、今の彼女の勢いを物語っている。ただ、肝腎の展示には少し違和感を覚えた。
今回の「noir」のシリーズは、あの2008~10年に東京オペラシティアートギャラリーを皮切りに全国巡回した「地上の花、天上の色」展の最後のパートで予告されていたものだ。華やかな極彩色の「蜷川カラー」を極端に「noir(黒)」の方へ傾けることで、魑魅魍魎がうごめくようなバロック的な世界をこの世に出現させる。その意図はよく理解できるし、もともと蜷川の中に潜んでいた闇、死、狂気への志向を解放しようとする興味深い実験といえる。ただ、壁にプリントをべたべた貼付ける見せ物小屋的な展示は、以前のポップな作品には合っていても「noir」にはあまりふさわしくないように思える。ここは、虚仮威しでもハイブラウな、洗練された展示空間を作り上げてほしかった。フレームに入れて展示されていた作品もあったが、それもやや中途半端に感じた。
同じことは、同時に発売された写真集『noir』(河出書房新社)にもいえる。この本も作品の内容と造本、レイアウト、印刷などがあまりうまく合っていないのではないだろうか。可能性を感じるシリーズだけに、ぜひぴったりとした器を見つけてほしいと思う。

「noir」2010
© mika ninagawa
Courtesy of Tomio Koyama Gallery

2010/12/01(水)(飯沢耕太郎)

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