artscapeレビュー
京都写真展
2011年01月15日号
会期:2010/12/21~2011/12/26
ギャラリーマロニエ[京都府]
京都在住の写真家たちを中心に、年末の京都で開催される「京都写真展」。今年は11回目を迎え、「時間論」をテーマに25人の写真家たちが出品している。出品作家はアイウエオ順に浅野裕尚、石原輝雄、市川信也、岩村隆昭、奥野政司、金井杜道、金澤徹、木下憲治、小池貴之、小杉憲之、後藤剛、ササダ貴絵、新治毅、杉浦正和、鈴鹿芳康、須田照子、中島諒、宮本タズ子、村中修、森岡誠、森川潔、安田雅和、矢野隆、薮内晴夫、山崎正文である。
ベテラン作家が多く、表現の水準が安定しているので、毎回安心して見ていられるのだがやや活気に乏しい印象があった。だが今回は意欲作が多く、なかなか充実した展覧会に仕上がっていた。前回までは「風景」がテーマだったのが、今回から「時間論」に変わったのが大きいのかもしれない。いうまでもなく、「時間」は写真の最大の表現要素の一つであり、発想がより多様な形に展開できる。今回の出品作にも、金井杜道や奥野政司のように過去に撮影した旅のスナップを再プリントする者もあれば、森岡誠のブレを活かした表現、鈴鹿芳康の合掌する僧侶の手のクローズアップのような、哲学的な解釈に走る者もいる。マン・レイの研究家としても知られる石原輝雄は、郵便物、絵葉書、書籍、シャンパンのコルク、自分自身の古い肖像写真を組み合わせた、興味深いインスタレーションを試みていた。来年以降も面白い展示が期待できそうだ。
なお、ほぼ同時期に、京都市内のギャラリーカト、ヤマモトギャラリー、同時代ギャラリー、ギャラリーマロニエでは「How are you, PHOTOGRAPHY?」
展が開催された。こちらは15回目、のべ参加人数は1500人を超えるという、年末恒例のグループ展である。出品作家は「京都写真展」とも重なっているが、より幅が広く、写真をはじめたばかりの初心者でも気楽に参加できる。こういうイベントが毎年途切れることなく続いているところに、京都という場所の文化的な懐の深さが感じられる。
2010/12/22(水)(飯沢耕太郎)