artscapeレビュー

大﨑のぶゆき「falls」

2011年01月15日号

会期:2010/11/06~2010/11/26

YUKA contemporary[東京都]

水溶性のメディウムで描いたイメージをあえて水で流し溶かし、その形象をゆっくり崩していく様子を映像として見せる作品。色鮮やかな山水画が崩落するアニメーションだが、水流にあわせて落下する人型のアイコンが崩壊のカタルシスを強調していて、おもしろい。確固としていたはずの基盤や土台が脆くも崩れつつある、現在の不安定な社会制度を重ねて見ることもできるだろう。ただし、この作品の醍醐味は「崩落」や「落下」にあるというより、むしろ「変形」にあるのではないか。少女のイメージを扱った別の作品では、垂直方向から撮影しているからなのか、有形物が重力に従って無形物となって崩れ落ちていく経緯ではなく、ゆったりとした速度で別の形象へと変化していく過程を見せているからだ。崩壊の快楽はもちろんある。けれども、それだけではない。大﨑が視覚化しているメタモルフォーズの観察は、変化の先に待ち受けている未知の可能性を暗示しているのであり、それは必ずしもネガティブなものではないのである。

2010/11/24(水)(福住廉)

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