2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

菊竹清訓の訃報

その日は昼前くらいから、新聞各社からの電話が立て続けに入った。そういうときは、決まって巨匠が亡くなったときである。内密にとは言われたものの、新聞社がネットでニュースを配信するより先に、すでにtwitter上で情報が流れていた。以前とは、ここの状況が全然異なっている。とすれば、紙媒体における訃報記事は、速報性ではかなわないのだから、よりまとまった論が重要になるだろう。今回は2社に寄稿したが、ポイントはメタボリズム運動を通じて1960年代の日本前衛デザインを牽引したこと、そして伊東豊雄ら、多くの建築家を事務所から輩出したことである。

2012/01/05(木)(五十嵐太郎)

フェルメールからのラブレター展

会期:2011/12/23~2012/03/14

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

フェルメールが3点も来た。たった3点というなかれ、数の少ないフェルメールだからとても貴重だ。しかも今回は借りられるものを借りてきたというのではなく、手紙をモチーフにした絵に絞っている。とりわけうれしいのは《手紙を読む青衣の女》が見られること。地図をバックに女性が横向きに手紙を読み、かたわらに椅子やテーブルが置いてあるだけ、色彩もブルー系とオーカー系でまとめたきわめてシンプルな小品だが、おそらく画家の筆がもっとも冴えた最盛期の傑作のひとつといえる。注目すべきは、女性の頭部と背景の地図に同系色を用いながら、質感の違いや陰影・明暗を微妙に描き分けていること。これは、色彩も輪郭もくっきり描いた晩年の作とおぼしき《手紙を書く女と召使い》と比べると、違いは明らか。まさにフェルメールならではの絶妙な表現だ。フェルメール以外にもヤン・ステーンとかテル・ボルフとかヘリット・ダウとか、興味深い画家がたくさん出ているが、目に止まったのはファン・ボホーフェンという画家。珍しい大画面(といっても120号大)に11人の家族を描いたものだが、胴体と顔の向きが不自然なうえに、それぞれエリマキトカゲのように巨大な白襟をつけているので、なんだか生首の見本市みたい。でも美術史的な価値基準によらずにこれをながめてみると、スーパーリアリズムかコラージュ作品のようにも見えてくるのだ。惜しいことに、これを描いた4年後にわずか25歳の若さで亡くなったという。もう少し長生きしていたら名を残したかも。

2012/01/06(金)(村田真)

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渋谷ユートピア1900-1945

会期:2011/12/06~2012/01/29

渋谷区立松濤美術館[東京都]

菱田春草、岡田三郎助、岸田劉生、村山槐多、竹久夢二など、かつて渋谷区(1932年に誕生、それ以前に豊多摩群の一部)には多くの芸術家が住んでいたらしい。地図で見ると代々木と広尾あたりに多いようだが、全体に点在している。別に芸術家たちがこの地にユートピアをつくろうと移り住んだわけではなく、ましてや渋谷区が芸術家を優遇していたはずもなく、当時たまたま家賃が安かったのでこのあたりに住んだというだけの話だろう。それでも渋谷区としては「文化の街」としてのイメージアップにつながるからシメタもの。ならばいま芸術家を支援しておけば、50年後くらいにもっと豪勢な「渋谷ユートピア2000-2050」とか開けるかもよ。

2012/01/06(金)(村田真)

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藝大先端2012

会期:2012/01/07~2012/01/15

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

全体の印象だが、初期のころの先端の卒展に比べて、つくる技術も見せる技術も格段にレベルアップしているのは明らかなのに、なぜか今年はひとつも心に残る作品がなかったなあ。毎年1点や2点は「優れた」というより「規格外・想定外の」それゆえに「心に残る」作品が見られたのに、それがないということは、ひょっとして「先端芸術」という規格・想定に収まる優等生が増えたということかもしれないし、それはそれで先端芸術表現科の勝利なのかもしれない。あるいは心に残らないのは、毎年確実に広がるぼくと卒業生との世代間ギャップによるものだとしたら寂しい限りだが、まあ単にぼくが正月ボケだったからだと考えるとちょっと安心したりして。

2012/01/07(土)(村田真)

京都府美術工芸新鋭展 京都美術・工芸ビエンナーレ2012

会期:2012/01/04~2012/01/19

京都文化博物館[京都府]

京都府美術工芸新鋭展は絵画、彫刻、版画などの美術分野と、漆芸、陶芸、染織、金工、人形などの工芸分野が隔年で開催される選抜展なのだが、今年は「国民文化祭・京都2011」開催記念として両方の展示が行なわれた。本展には全国からの応募作品により選抜される「公募部門」と、審査員が推薦した作家、および芸術系大学、専門学校などが推薦する若手作家の「招待部門」があり、展示スペースもそれぞれの部門ごとに区切られている。美術分野の審査員による推薦では、中山玲佳、樫木知子、英ゆうなど、現在あちこちで活躍を目にする作家たちが紹介されていた。多くの作品のなかで、工芸分野では、ダイナミックで色鮮やかな抜井聡美の型絵染作品《夢をみていたフラミンゴ》、美術では、藤井俊治の油画《名前も知らないパレード》など、瑞々しい感性や力強さが印象に残る作品があった。しかし、美術、工芸分野のどちらも、副賞金が贈られる大賞に、この方々はベテランとされる作家では?と思う活動歴の長い作家が選ばれていたのが気になった。もちろん「新鋭」の評価は年令(若さ)重視というものではないだろうが、それにしても新進作家の育成を図るという本展の趣旨とは噛み合わず迷走している印象も否めない。

2012/01/07(土)(酒井千穂)

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