2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

おとなが学び合うこどもの声&フォーラム「研修バスツアー──メリーゴーランド(三重県四日市)へ行こう」事前勉強会

会期:2012/01/22

中之島4117[大阪府]

国立国際美術館のすぐ近くで、アーティストや、アートNPO、市民のためのアートインフォメーション&サポートセンターとして活動している施設「中之島4117」。アートにまつわる講座や子どものためのワークショップなど、さまざまなプログラムを実施している。そのひとつに、月に一度、子どもやアートについて参加者が自由に情報や意見を交換し合う「おしゃべり会」を開いている「こどもとアートとその周辺のためのプロジェクト「RACOA(らこあ)」というプログラムがある。この関連企画で、四日市市にある子どもの本専門店「メリーゴーランド」を訪問するという研修バスツアーがあり、私も申し込んだ。とてもユニークな書店だと聞いたことがあり、以前から興味があったのだ。この日は、ツアーの参加者の事前勉強会が「中之島4117」で行なわれて出席。勉強会といっても、それぞれが自己紹介をしたあと、「メリーゴーランド」のオーナーである増田喜昭さんの著作より抜粋されたテキストを皆で順番に読み回していくというものなのだが、これがなんとも良い時間になった。本には「メリーゴーランド」に関することのみならず、店舗の2階で行なわれている「あそびじゅつ(遊美術)」という子どもの造形ワークショップのこと、町の人たちや学校を介しての子どもたちとの交流エピソードなど、増田さんのこれまでの活動が数々記されていたのだが、それがどれも魅力的な内容で想像が掻き立てられていく。文章そのものの説得力も凄いのだが、すべて読み終える頃には、この勉強会の場もすっかり和やかなムードになっていた。なにかコメントしたい!というイキイキした表情の人たちによってその後の話も弾む。学生から60代の方まで、年令も職業もさまざまな方が出席していたのだが、この勉強会がなかったならば、翌週のバスツアーの雰囲気も違っていただろう。じつを言うとはじめは事前勉強会なんて面倒くさい、と思いながら出向いたのだが(すみません)、RACOAのスタッフに感謝。

2012/01/22(日)(酒井千穂)

長船恒利の光景 1943~2009

アートカゲヤマ画廊/ギャラリーエスペース/gallery sensenci[静岡県]

会期:2012年1月16日~22日/1月9日~22日/1月14日~2月12日
長船恒利は1943年北海道小樽市の出身。1964年から静岡の県立高校の教員となり、70年代半ばから写真家としても活動し始めた。ちょうど写真家たちによる自主運営ギャラリーが活性化し始めた時期であり、彼も藤枝で「集団GIG」を結成、1980年からは静岡のジャズ喫茶JuJuを舞台に積極的な展示活動を行なった。1980~90年代にはコンピュータ・アートを実験したり、プリペアド・ピアノの演奏を披露したりするなど、写真家の枠を超えた活動を展開、2003年に教職を離れてからは、チェコ、スロバキア、ポーランドなど中欧諸国の美術や建築のモダニズムを本格的に研究し始めた。その成果がようやく実り始めた矢先、腎臓癌を患い、2009年に逝去する。今回藤枝のアートカゲヤマ画廊、ギャラリーエスペース、静岡のgallery sensenciの3カ所で開催された「長船恒利の光景 1943~2009」は、遺族や友人たちが準備を重ねて、3年後に開催された追悼展である。
長船の写真の仕事は、写真そのものの根拠を問い直す「写真論写真」の典型と言える。1970年代後半~80年代に自主運営ギャラリーや企画展を中心に発表していた若い写真家たちの、写真を通じて「見る」ことや「撮影する」ことの意味を検証しようとする試みのなかで、長船の作品は最も高度なレベルに達していた。代表作である、4×5判の大判カメラで静岡や藤枝の日常的な光景を定着した「在るもの」(1977~79年)のシリーズなどを見ると、ほぼ同時代のドイツのベッヒャー派の写真家たちの仕事に通じるものがある。長船を含めた同時期の写真家たちの仕事は、美術館レベルの展覧会で再評価されていいと思う。
長船はまた、写真家の枠を超えた活動も展開していた。最晩年に手がけていた石を磨き上げた彫刻作品など、詩情と強靭な造形力が溶け合った見事な出来栄えである。音楽やパフォーマンスなどを含めた「表現者」としての長船の像も、もう一度再検証していくべきだと思う。追悼展を機に美術家の白井嘉尚の編集で刊行された、箱入り、7冊組の作品・資料集『長船恒利の光景』が、その最初の足がかりになるだろう。

2012/01/22(日)(飯沢耕太郎)

土佐正道 絵画展

会期:2012/01/23~2012/01/29

Chapter2[神奈川県]

明和電機会長の土佐正道による絵画の個展。太陽の塔、瀬戸大橋、厳島神社、東京タワー、みなとみらい地区など、おもに大規模な建造物を描いたグワッシュ画が10点ほど。これらは約10年前に、昭和40年会のメンバーの指導を受けながら半年間で集中的に描いたものだという。それまでほとんど絵筆をにぎったことがなかったらしいが、そのわりにはウマイというか、理数系のきっちりした絵である。なによりおもしろいのは、たとえば太陽の塔なら正面ではなく裏側の黒い顔だけをアップで描いたり、厳島神社なら大鳥居を横から(つまり1本の柱として)描いたり、鳥取砂丘ならラクダに乗るための台をポツンと描いたりしていること。そのユニークな視点と、描写技術のギャップがおもしろいといえばおもしろいが、もう少し制作を続けていればどうなったか見てみたかった。これらの絵を肴に昭和40年会のメンバーが講評する記録映像も上映している。

2012/01/23(月)(村田真)

「水と土の芸術祭2012」プレス発表会

会期:2012/01/25

六本木アカデミーヒルズ スカイスタジオ[東京都]

3年前に新潟市で開かれた通称「みずっち」だが、今年ようやくトリエンナーレとして7月14日からの第2回展開催が決まった。事業はアートプロジェクト、市民プロジェクト、シンポジウムの3つからなり、アートプロジェクトは水戸芸術館学芸員の竹久侑らがディレクターに就任。作品は招待と公募の2本立てで、市内各地に展示していく。参加作家は石川直樹、カミン・ラーチャイプラサート、西野達、原口典之、日比野克彦、藤浩志、吉原悠博、王文志らが決まっている。北川フラムがディレクターを務めた3年前は新潟市内のほぼ全域に作品を点在させたため、見て回るのが大変だったが、今回は万代島旧水揚場をメイン会場にしてもう少しコンパクトにまとめるようだ。今年は7月29日から同じく新潟県で越後妻有アートトリエンナーレも開かれるので、まとめて見に行くぞ。

開港都市にいがた 水と土の芸術祭 2012 URL=http://www.mizu-tsuchi.jp/

2012/01/25(水)(村田真)

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MP1 Expanded Retina|拡張される網膜

会期:2012/01/21~2012/02/05

G/P GALLERY[東京都]

MP1は、エグチマサル、藤本涼、横田大輔、吉田和生という1982~84年生まれの4人の写真家たちと、批評家の星野太によるグループ。2011年秋に横浜トリエンナーレの関連企画として、横浜・新港ピアで開催された「新・港村」で「拡張される網膜」展を開催して本格的に始動した。2012年は本展をはじめとして、都内のいくつかのギャラリーやウェブ上で複数のプロジェクトを進行する予定だという。
正直言って、作風、経歴にそれほど重なり合うところのない彼らが、グループとして活動していく強い理由を見出すのは難かしい。ただ、写真家たちによる自主運営ギャラリーの活動もそうなのだが、異質な要素が触媒的に働くことで、メンバーの作品が思わぬ方向に伸び広がっていくということは大いに期待できる。例えば今回の展示では、かなり過剰に「表現主義」的な傾きが強かったエグチマサルの写真+ドローイング作品が、すっきりとしたミニマルな雰囲気の画面に変質していた。反対に吉田和生は、被写体のエレメンツをしつこく反覆・増殖していく傾向を強めている。このような化学反応を、むしろ積極的に触発していってほしいものだ。そこから星野の言う「写実的な外界の痕跡でもなければ、表現主義的な内面の吐露でもない」、ちょうどその中間領域とでも言うべき「網膜」の表層性に徹底してこだわる、彼らのスタイルが模索されていくのではないだろうか。
なお、展示にあわせて500部限定のコンセプト・ブック『Expanded Retina|拡張される網膜』(BAMBA BOOKS)が刊行されている。きっちりと編集されたクオリティの高い作品集だ。

2012/01/25(水)(飯沢耕太郎)

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