2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

CHISATO TANAKA“FLASH BACK NIGHT”

会期:2012/01/10~2012/01/21

ギャラリー現[東京都]

田中千智がアルファベット表記になってる! もともとアルファベット名のアメリカ人でも日本のメディアに出るときはカタカナ表記になるのに、漢字名をもつ者が日本メディアにわざわざアルファベット名で出るのはヘン、という立場ですが作家の意向も尊重しなければなりませんね。とここまでに約130文字を費やしてしまったではありませんか。作品は黒い地に人物や風景や乗り物をザックリ描いた絵が10点ほど。人物はマフラーを巻いてひとりポツンと描かれてる絵が多くてどこか寂しそうだ。いやそれは乗り物にもいえて、船や飛行機は背景がほとんどなく遠望した情景になっており、円形キャンヴァスの作品などは国境を越えて攻撃を受ける北朝鮮の漁船を想起させる。風景はさすがに画面の真ん中にポツンと描くわけにはいかないけれど、背景が黒いので夜景に見え、独特の情感を醸している。福岡と釜山の風景だそうだ。これらのことを彼女自身の心境に結びつけることができるかもしれないし、名前をアルファベット表記に変えたのもそのことと関係しているのかもしれない、などと結論づけるのは早計だが、そのように見るのもひとつの楽しみ方ではある。

2012/01/16(月)(村田真)

細江英公写真展 第1期 鎌鼬

会期:2012/01/06~2012/01/29

BLDギャラリー[東京都]

この1月から5月にかけて細江の仕事を6期に分けて振り返る回顧展。その第1期が「鎌鼬」だが、読めるかな。カマイタチね。舞踏家土方巽を故郷の秋田の農村で撮ったモノクロ写真集で、1970年に芸術選奨文部大臣賞を受賞した不朽の名作。東北を舞台にした土方の奔放なパフォーマンスを細江のカメラが見事にとらえているのだが、写真集はこのふたりだけでなく、ブックデザインの田中一光、文を寄せた瀧口修造や三好豊一郎、そして被写体となった東北の人々の力が結集された空前のコラボレーション作品になっている。ぼくもほしかったけどなかなか手に入らず(たまに古本屋で見かけてもきわめて高価)、たまたま立ち寄った古書市で安く入手。本の価値を知らない古書市というのは、うれしいけど悲しい。数年前には復刻版も出ている。出品作品は、一辺90センチほどの正方形の黒いパネルにプリントを貼ったもの。周囲に銀が浮き上がっているヴィンテージプリントだ。

2012/01/16(月)(村田真)

鬼海弘雄 写真展 PERSONA 東京ポートレイト、インディア、アナトリア

会期:2011/12/15~2012/01/29

山形美術館[山形県]

鬼海弘雄は2011年8月に東京都写真美術館で、浅草・浅草寺の境内で撮影し続けている人物写真と、東京周辺の街々を歩き回りながら撮影した6×6判の風景のシリーズをあわせて「東京ポートレイト」展を開催した。今回の山形美術館での展示はその拡大版と言うべきもので、その「東京ポートレイト」の作品群に加えて、「インディア」と「アナトリア」のシリーズをあわせて見ることができた。
この35ミリカメラによるスナップショットの2つのシリーズも息の長い仕事だ。インド各地を撮影した「インディア」は1980年代から、トルコの黒海沿岸の村々を中心に撮影した「アナトリア」は1990年代から、何度も現地に足を運んで続けられている。「東京ポートレイト」の2作品が、かなり厳密に方法論を定めて撮影しているのと比較すると、こちらは被写体との出会いの偶然性に依拠しながら、人々のさまざまな表情や身振りを、柔らかな、だが精確な眼差しで捉えた写真が並ぶ。むろん、どちらも鬼海弘雄の写真家としての姿勢をよく示すものであり、両者があわさって、はじめて彼の作品世界の広がりを見通すことができるとも言えるだろう。その意味では、文字通りの代表作を集成した回顧展と言うべき展示が、彼の故郷である山形県寒河江市に近い山形市の美術館で実現したのはとても素晴らしいことと言える。
少し残念だったのは、予算の関係もあってか、今回の「PERSONA 東京ポートレイト、インディア、アナトリア」展の出品作をすべて収録したカタログをつくることができなかったこと。いつか、ぜひ実現してほしいものだ。

2012/01/16(月)(飯沢耕太郎)

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御厨貴先生退職記念シンポジウム─権力の館をめぐって─

会期:2012/01/18

東京大学[東京都]

御厨貴の『権力の館を歩く』をテーマとした最終講義と座談会が行なわれたが、同書は各節がそれぞれ論文に発展しそうな一大鉱脈を発掘した本である。一般的に政治と権力の結びつきが弱いとされる日本において、どのような現場で空間と政治が結びつくかを読み込む。かといってフーコーのようなアノニマスな権力でもない。例えば、由比ケ浜の鎌倉文学館はかつて佐藤栄作首相の鎌倉別邸に使われた。三島由紀夫「春の雪」にも描かれた折衷的な洋館ではあるが、欧米の基準から見ると、これは超豪邸とは言えない。日本建築の権力表象は興味深いテーマだ。

2012/01/18(水)(五十嵐太郎)

Proto Anime Cut 展

会期:2011/01/20~2012/06/06

Kuenstlerhaus Bethanien(2011/1/20~2011/3/6)/Dortmunder U Center for Art and Creativity(2011/7/1~2011/10/23)/Espai Cultural de Barcelona(2012/1/25~2012/3/25)/La Casa Encendida(2012/4/15~2012/6/6)[ドイツ、スペイン]

六本木にて、ステファン・リーケルスやデイビッド・ディヒーリらと、ベルリン発の日本アニメ展「Proto Anime Cut」に関する打ち合せを行なう。庵野秀明、押井守、森本晃司、渡部隆らの作品における建築・都市・風景に焦点をあてる好企画だ。特に庵野自身が撮影した風景写真も入っているのは、貴重だろう。展示そのものは見てないが、素晴らしいカタログが完成している。是非、日本に巡回できるといい。

2012/01/20(金)(五十嵐太郎)

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