2022年12月01日号
次回12月15日更新予定

artscapeレビュー

2012年02月15日号のレビュー/プレビュー

長谷川豪 展 スタディとリアル

会期:2012/01/14~2012/03/24

TOTOギャラリー・間[東京都]

思い切りがいい、作品構成だった。大きなテーブルの端にさまざまなスケールでプロジェクトの模型を置く。とくに興味深いのは、この展覧会を東日本大震災で被害を受けた石巻の幼稚園に建物を寄贈するプロジェクトに活用したことだ。屋外に1/1の鐘楼を建設し、会期が終わったら、現地に移築する。通常、建築展は、作品が商品化され、市場に流通するアートとは違い、終了後に多くの展示物が廃棄されてしまうが、このリサイクルは素晴らしい。

2012/01/20(金)(五十嵐太郎)

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DOMANI・明日展

会期:2012/01/14~2012/02/12

国立新美術館[東京都]

今日は開館5周年記念日ということでタダ。「DOMANI」は文化庁の在外研修制度で海外に行った作家たちの成果を発表する展覧会なので、出品作家相互のつながりが希薄なため各作家の個展として見るしかない。塩谷亮のリアリズム絵画や阿部守の鉄の彫刻などを無事通過して、ようやく足が止まったのは最後から2番目の児嶋サコの作品。彼女はウサギだかネズミだか小動物の着ぐるみをつけてパフォーマンスするチャラいアーティスト、と思っていたが、ここではモチーフこそネズミではあるけれど、表現主義的なタッチのしっかりしたペインティングを出しているので驚いた。80年代の新表現主義絵画を思い出すなあ。そして最後が元田久治の廃墟画。既存の建築が廃墟になった想像図ばかりを描いてる画家で、派遣されたメルボルンやサンフランシスコでも鉄道駅やスタジアムを廃墟にしてしまうのが痛快だ、みたいなことを以前にも書いたことがあるなあ。3月から廃墟画の大先輩ユベール・ロベール展(2012年3月6日~5月20日、国立西洋美術館)が開かれるので、比べてみるのも一興かも。

2012/01/21(土)(村田真)

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野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿

会期:2012/01/18~2012/04/02

国立新美術館[東京都]

いま国立新美術館で野田裕示の個展が開かれるというと、「なぜ?」どころか「だれ?」といわれかねないが、70年代に美大に通っていたぼくらの世代にとって野田の名は輝かしいものだった。なぜなら彼は多摩美を卒業した翌1977年に、最年少作家として南画廊で個展を開いたからだ。南画廊とはまだ現代美術を扱う画廊がほとんどなかった当時、もっとも勢いのあった現代美術専門の画廊であり、そこで個展を開くとはもう将来を約束されたようなもの(とぼくは勝手に信じていた)。が、80年代に入ってからはいわゆるニュー・ウェイヴの一群に押されて、野田の名は徐々にフェイドアウトしていく。だから今回の個展は当然70年代の作品から並ぶと期待していたのだが、なぜか省かれ、80年代から始まっているのだ。作品が現存しないのか、それともその後の仕事との整合性がつかないからなのかはわからないが、とにかく70~80年代の美術に関心のある者にはちょっと残念。それでも、ジャスパー・ジョーンズあたりに触発されたレリーフ状の作品から、どこか琳派の屏風を思わせる近年の平面まで、約30年におよぶ140点もの作品は圧巻というほかない。具象的な形態や記号を連想させるイメージは、すでにポストモダニズム絵画に親しんだ目には古くさく感じられるものの、着実に変化していく仕事の展開は十分に納得できた。

2012/01/21(土)(村田真)

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IPP#0「風景の逆照射」

会期:2012/01/06~2012/01/21

京都精華大学ギャラリーフロール[京都府]

私たちは、日頃何気なく「風景」という言葉を使う。この展覧会は、そのような、すでに浸透し定着してしまっている「風景」の概念、人間主体のいわゆる西洋近代的な考え方でこれまで私たちが眺めてきた「風景」についてあらためて考え、「風景」と人間の関係性を問いなおそうというものであった。出品者で、企画者でもある林ケイタと安喜万佐子の、「見る」ということについての意見交換が発端で開催に運んだという今展には、ほかに、柏原えつとむ、木下長宏、杉浦圭祐、坪見博之、森川穣、濱田陽、(故)山中信夫、RADという人々が参加していた。美術、芸術思想史、俳句、脳科学、映像、宗教、建築と、じつにさまざまなフィールドで活動する専門家だ。このメンバー全員が作品を発表していたのだが、見事だったのは個々の作品が単独で展示されているというのではなく、それぞれが他の出品者の作品との連関を持ちながら成立し、会場全体をつくっていたこと。各々の作品も、それらのイメージが緩やかに他とオーバーラップしていく構成も美しい。本展が目指す大きなテーマや「風景」の問いに丁寧に取り組み、話し合いや考察を重ねてきたのだろうメンバーの姿勢が裏打ちとしてうかがえるものでもあった。二階のフロアの壁面には、木下長宏氏の「風景」に関するテキストがプロジェクターで投影されていたのだが、これも含め、素晴らしい展覧会だった。

2012/01/21(土)(酒井千穂)

第8回芦原義信賞・竹山実賞表彰式

会期:2012/01/21

武蔵野美術大学[東京都]

審査委員長を務めた第8回芦原義信賞の表彰式に出席した。今回は、不動産とデザインの新しいシステムを組み立てるブルースタジオの大島芳彦と、蓄光性の塗料を床の傷にすりこむ若手の戸井田雄が選ばれた。同窓会自体はどこの建築学科にもあるが、同日は竹山賞の表彰式や卒計講評会も開催され、大学の縦のつながりを確認できるイベントは、意外にほかではないと思う。武蔵野美術大学の卒計展示を見ると、模型が大きいこと、美大ならではの表現があり、目を楽しませる。同大の建築学科にアーティストの土屋公雄が教えるようになって、彼のスタジオでは1/1の卒計をつくるようになったらしいが、屋外にて展開した地面をめくり上げるようなインスタレーションが印象に残る。

2012/01/21(土)(五十嵐太郎)

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