artscapeレビュー
2014年08月15日号のレビュー/プレビュー
トーキョー・ストーリー2014
会期:2014/06/14~2014/07/21
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
渋谷のほうでは4組の発表。日本に滞在したパリバルタナ・モハンティは、「アーティストとしてフクシマと関わることはとても難しい」ということを作品化したような映像を制作。そんな作品がおもしろいわけがないのだが、モニターを窓に取りつけたり、吹き抜けの梁の上に水平に置いたり、どこかイジケてるところがカワイかった。同じフクシマでも、小沢剛の部屋はもっと心に染み込んでくる。絵画、ドローイング、写真、そして壁にも言葉が刻印され、中央に据えられたテーブル上には石碑やガラス瓶が置いてある。壁の向こうには牛の死体(ぬいぐるみ)の山。すべてモノクロームに統一され、ウムをいわせぬ説得力がある。昨年フェスティバル/トーキョーで発表された作品の別バージョンらしいが、見逃したのがつくづく残念。
2014/07/05(土)(村田真)
戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家
会期:2014/07/05~2014/08/31
埼玉県立近代美術館[埼玉県]
埼玉県立近代美術館にて、筆者が監修で関わった「戦後日本住宅伝説」展が無事スタートする。館長の建畠晢氏が、だいぶ前からやりたいと語っていた念願の企画であり、ついに実現した。おそらく「公立」の「美術館」で、これだけの規模の住宅展は、しばらくなかったであろう。しかも丹下健三から安藤忠雄、伊東豊雄まで、1950~70年代の黄金期に焦点をあてたものは初めてだから、貴重な機会と言える。北海道、東北、関東、東海、沖縄の各大学の研究室で制作した1/30と1/50の住宅模型(各作品の大きさを比較できる)、オリジナルの図面のほか、大きく写真を伸ばしたタピスリーや《塔の家》の1/1プランによって、空間を体感できる仕かけを設けた。また黒川紀章による《中銀カプセルタワー》のカプセルの実物が、美術館のある公園内にすでに移築されている。各住宅の映像資料(昔のドキュメントや撮り下ろしなど)もあり、それを全部鑑賞すると、かなり時間がかかるだろう。埼玉の後は、広島現代美術館(10/04~12/07)、松本市美術館(2015/04/18~06/07)、八王子市夢美術館(2015/06~2015/07)に巡回する予定。
2014/07/05(土)(五十嵐太郎)
スリーピング・ビューティー
会期:2014/05/17~2014/07/21
広島市現代美術館[広島県]
コレクションを活用しながら、美をテーマに古今東西の現代美術の作品を紹介する展覧会。冒頭はイブ・クラインなどだが、田口和奈の新作など、後半のセレクションは若手が多い。岩崎貴宏による金閣や銀閣など、水に映る古建築の実体とイメージの両方を模型化する作品は労作だ。
2014/07/06(日)(五十嵐太郎)
オルセー美術館展 印象派の誕生──描くことの自由
会期:2014/07/09~2014/10/20
国立新美術館[東京都]
もう5、6回目だろうか、オルセー美術館展。毎回手を替え品を替えコレクションを小出しに紹介しているが、今年は第1回印象派展から140年になることから「印象派の誕生」をテーマとした。マネの《笛を吹く少年》を筆頭に、ミレー《晩鐘》、モネ《サン・ラザール駅》、アカデミズムの画家カバネルの《ヴィーナスの誕生》も含め、有名絵画・人気作品が目白押し。でもぼく的には、印象派の主流から少し外れたバジールの《バジールのアトリエ、ラ・コンダミンヌ通り》や《家族の集い》、床の輝きを見事に表現したカイユボットの《床に鉋をかける人々》、ヴェルレーヌとランボーが登場するファンタン・ラトゥールの《テーブルの片隅》、最愛の母を描いたホイッスラーの《灰色と黒のアレンジメント第1番》、印象派にはない独特の趣味を感じさせるティソの《ミラモン侯爵夫妻と子どもたちの肖像》などを見られたのがうれしい。次回は陳腐なアカデミズム絵画ばかりを集めた「ポンピエの画家たち」を特集してくれないかな。
2014/07/08(火)(村田真)
大塚泰子 展「空間色 space color」
会期:2014/07/08~2014/08/02
ケンジタキギャラリー[東京都]
太さ1センチほど、長さ90センチはあろうかという細長い角材に布を張り、片面だけ赤く塗って壁に取りつけている。一見ただの角材だが、絵画としての条件は備えている。ほかにも、生の綿キャンバスの半分だけ壁と同じ白色に塗ったり、縁の部分だけ白く塗ったり。絵画の形式を内容にした絵画、といえばいいのか。
2014/07/08(火)(村田真)