artscapeレビュー
2014年08月15日号のレビュー/プレビュー
グループ展「‘Cazador’KURAMATA Shiro/TAKAMATSU Jiro Photographed by FUJITSUKA Mitsumasa」
会期:2014/06/18~2014/07/19
「カッサドール」とは新宿2丁目にあったサパークラブで、倉俣史朗が内装を手がけ、高松次郎が壁画を描いた。その制作風景を撮影した藤塚光政の写真を展示しているのだが、これがただの記録写真ではない。高松は壁に例のごとく人影を描いていく。その方法はモデルの背後から強い光を当てて壁に影を投影し、それを高松がなぞっていくというやり方。しかしこれだと高松自身の影も重なってしまう。それを藤塚は撮っているのだ。つまりここにはモデルの影、それをなぞった影の絵、そして高松自身の影という三つの影が捉えられているわけだ。間違って高松は自分の影を描かなかっただろうか。
2014/07/11(金)(村田真)
聖徳記念絵画館
会期:2014/07/12~2014/09/21
今日は常設展示で戦争画が見られる都内の3カ所を回ってみた。まずは神宮外苑の絵画館。ここは明治天皇と昭憲皇太后の事績を80枚の絵画で伝えるもので、戦争画といっても西南の役とか日清・日露戦争までなので、第二次大戦のいわゆる戦争記録画とは無縁だ。でもふと思ったのは、これら大正から昭和初期に描かれた大画面(3×2.5メートル)での歴史画制作の経験が、のちの戦争記録画に役立ったのではないかということ。そんな巨大な歴史画を描く機会なんて少なくとも洋画家にはほとんどなかったからだ。ちなみに、ここに奉納された画家でのちに戦争画も手がけた洋画家には、石井柏亭、石川寅治、大久保作次郎、太田喜二郎、鹿子木孟郎、北蓮蔵、清水良雄、和田三造らがいる。とくに鹿子木の《日露役奉天戦》と東近にある《南京入城》は、縦長・横長の違いはあるけれど、兵隊が馬に乗って行進するモチーフおよび構図はよく似ている。無関係とはいえないだろう。
2014/07/12(土)(村田真)
靖国神社遊就館
東京国立近代美術館
会期:2014/07/12~2014/09/21
遊就館から歩けるけど、今日は暑いから地下鉄に乗って竹橋の東近へ。ここは153点もの戦争画を有する宝庫だが、残念ながら常設展で少しずつしか見られない。今回は藤田嗣治《アッツ島の玉砕》をはじめ、岩田専太郎《小休止》、中村研一《北九州上空野辺軍曹機の体当りB29二機を撃墜す》の3点の出品。なるべく目立たないように小出しに紹介してるけど、まだ公開されてない作品もたくさんあるんだろうな。この3点のほか、1941年制作の国産アニメ『動物となり組』も上映されていた。トン、トン、トンカラリンの……こんなの子どもに見せていたのか。
2014/07/12(土)(村田真)
中野茂樹+フランケンズ2014 別役実「ハイキング」
会期:2014/07/08~2014/07/15
下北沢シアター711[東京都]
下北沢にて、ナカフラの公演「ハイキング」を観劇。別役実の不条理原作に負うところも大きいのだろうが、とにかく面白い。笑った、そして怖かった。「ハイキング」の概念をめぐるズレ、コミュニケーションのズレ、家族や社会の内外のズレが絡みあい、電信柱一本という日常的な風景がとてつもなく異化されていく。「ハイキング」は当初110分の予定が、100分になり、最終的に90分になったという「お詫び」が、わざわざ冒頭で示されたが、途中だれることがない、心地よいリズム感は、その20分を削ったことで得られたのではないかと推測する。ところで、夜の電信柱のふもとでの「ハイキング」の途中、唐突に傷痍軍人が登場した。筆者が小学生の頃、東京などの大都市を訪れると、上野駅の周辺などで傷痍軍人を目撃し、日本がまだ太平洋戦争と地続きであることをリアルに感じたことを覚えている。時代を引き戻し、後ろめたさを覚えさせる存在だった。
2014/07/12(土)(五十嵐太郎)