artscapeレビュー
2009年11月15日号のレビュー/プレビュー
チャールズ・ウォーゼン「ポリフォリーズ」
会期:2009/08/01~2009/11/03
府中市美術館[東京都]
毒々しい色のプラスチックを使って、かわいいかたちを成形するチャールズ・ウォーゼン。20年ほど前に何度か作品を見せてもらったが、いまもほとんど作品が変わってないことに安心する。というか、不安になるべきか。
2009/10/27(火)(村田真)
クリムト、シーレウィーン世紀末展
会期:2009/10/24~2009/12/23
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
19世紀末、アカデミズムへの決別を目指した「ウィーン分離派」、クリムト、エゴン・シーレなどを中心に、コロ・モーザーやマックス・オッペンハイマー、オスカー・ココシュカなど、ウィーン・ミュージアムのコレクション120点を紹介。最大の見どころとなるのはクリムトの《パラス・アテナ》だろうが、個人的に今展でもっとも見応えがあったのはシーレの肖像画。デッサンのタッチや繰り返しなぞられたそれらの筆跡から画家が深く関わった人物への眼差しや感情がうかがえる。華やかな印象の内容ではないが、この時代のウイーンの作家達の人間的な魅力が浮かび上がってくるような作品が並んでいて、できるだけじっくりと味わいたい展覧会だと思う。
2009/10/27(火)(酒井千穂)
Art Camp2009 サントリー賞受賞特別展「薄い皮膚」(吉村熊象、田中秀介)
会期:2009/10/23~2009/11/29
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
深く沈むような色彩の風景、しかし猛々しさというか、みなぎる生命感を印象づけられる絵画がミュージアムホールの壁面に展示されていた。芸術大学の学生を中心とした若手作家による展覧会「Art Camp」で今年サントリー賞を受賞した作家のひとり、田中秀介の作品だった。穏やかでありながら嵐の直前のような不穏な空気が入り混じるイメージのダイナミックな筆跡、目に飛び込んでくるような色の緊張感をともなった画面のバランスが凄い。個展があればぜひ見たい作家だった。
2009/10/27(火)(酒井千穂)
対照 佐内正史の写真
会期:2009/10/10~2010/01/11
川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]
佐内正史が持ち直しているのがわかって、とりあえずほっとした。昨年から立ち上げたネット販売の写真集レーベル「対照」の最初の3冊、『浮浪』『DUST』『trouble in mind』があまりにもひどい出来だったので、これはもう佐内の神通力も失せたのではないかと、内心見限っていたのだ。
ところが、今回の岡本太郎美術館の展示(大きなテーブルの上にプリントを並べるアイディアがすごくよかった)を見る限り、近作の『ARCA』『彩宴』『EVA NOS』『フラワーロードの世界』では、いかにも佐内らしい、スキップしつつ、リズミカルに被写体に弾を撃ち込んでいくような感覚がよみがえってきている。これはつまり、佐内の写真のあり方が、彼自身の精神的、身体的なバイオリズムを忠実に反映していることのあらわれだろう。要するに、彼のアンテナがちょっとでも錆びついてくると、てきめんに写真のボルテージが落ちてくるのだ。「自分」以外に写真を撮り続ける基準を持たない写真家の強みと弱みが、そこにははっきりとあらわれている。その不安定感が、佐内の写真の持ち味でもあるのだが、もう少しなんとかならないかとも思ってしまう。自己完結することなく、他者や社会とも風通しよく繋がっていくようなシステムを写真に導入することができれば、彼は「この時代」を体現し、代表するいい写真家になると思うのだが、それができないのがなんとももどかしい。このままでは、センスのいいインディーズ・バンドで終わってしまうだろう。それでいいのだろうか。
2009/10/29(木)(飯沢耕太郎)
皇室の名宝──日本美の華
会期:2009/10/06~2009/11/03(1期)
東京国立博物館[東京都]
若冲の《動植綵絵》全30幅が出ているというので、第1期の終了間近に見に行く。朝一番に出かけて真っ先に若冲の部屋に駆けつけたが、会場はすでに黒山の人だかり。それでもなんとか見ることができた。若冲はやっぱりすごい。なにがすごいかって、彼は動植物を描こうとしているのではなく、「絵」を描こうとしていることだ。このなかで若冲に匹敵するのは、唯一北斎の《西瓜図》だけではないかしら。それに比べりゃ抱一の《花鳥十二カ月図》など屁みたいなもの。
2009/10/30(金)(村田真)