artscapeレビュー

2011年02月15日号のレビュー/プレビュー

船→建築 ル・コルビュジエがめざしたもの

会期:2010/12/04~2011/04/03

日本郵船歴史博物館[神奈川県]

同館は船の博物館だが、これまでに前川国男、村野藤吾、中村順平、本野精吾らと客船デザインの関係を紹介したり、建築写真家の渡辺義雄をとりあげてきた。今回は、筆者が監修をつとめ、いよいよ本丸のル・コルビュジエから、近代における船と建築の類似性に切り込む。彼の主著『建築をめざして』の表紙も、実は建築ではなく、客船の写真だったように、建築家にとって客船は当時の最先端の機械のイメージであり、動く集合住宅だった。同展が指摘したほかにも、建築的なプロムナードの概念も、船内を散歩することから発想されたのではないか、など、さまざまな類似点が思い浮かぶ。日本の建築家では、最先端の客船ブレーメン号にのって感激した山田守とその作品への影響、岸田日出刀や板垣鷹穂らの著作も紹介している。
展示のラストは、もともとこの展覧会のきっかけになったプロジェクトだ。セーヌ川に係留された、ル・コルビュジエが船を改造した救世軍船上収容所の、遠藤秀平による仮設のシェルター計画である。ただし、現在、このプロジェクトはとまっている。同展の学芸員の海老名熱実とは建築系ラジオの収録も行った。

URL=http://architectural-radio.net/archives/110117-4599.html

2011/01/08(土)(五十嵐太郎)

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白石綾子 展

会期:2011/01/07~2011/01/22

ギャラリーQ[東京都]

近ごろ、ちょっと暗めな少女像を得意とする若手女性作家を輩出しているギャラリーQ。白石は、花柄の布を張った円形の画面に、身を丸めて寝ていたりうずくまっていたりする女性を描いている。どれもしどけない下着姿で、畳の上には衣服が脱ぎ捨てられ、おまけに顔が画面から切れていたり髪で隠れていたりするため、まるで小さな穴からのぞき見ているような淫靡な印象を与える。さらに、女性の腿や肩に刺青のように浮き出て見える地の花柄も、その印象を強めている。この地と図のダブルイメージはとても新鮮だ。

2011/01/08(土)(村田真)

俵萌子 展

会期:2011/01/07~2011/01/16

Oギャラリー[東京都]

こちらも若手の女性作家。作品は、関西のペインター館勝生とターナーをたして2で割ったような、抽象画のようにも風景画のようにも見える絵。色彩が深く、筆に勢いもあるので見ていて気持ちがいい。

2011/01/08(土)(村田真)

西田菜々子 展

会期:2011/01/07~2011/01/16

OギャラリーUP・S[東京都]

こちらはさらに若いペインターで、いっそう興味深い作品をつくっている。モチーフは和風の部屋や庭の片隅のようだが実景ではなく、唐突に掛け軸や屏風が描かれていたりする。そのシュールな情景にも惹かれるが、なにより魅力的なのはくすんだ色合いとモケっとした筆運びだ。ほしいと思った。が、その絵はすでに売約済み。

2011/01/08(土)(村田真)

鉄を叩く──多和圭三展

会期:2010/11/13~2011/01/09

目黒区美術館[東京都]

もうかれこれ30年、鉄の塊を叩いてる。鉄の塊はときに1トンを超えるというから、素人が叩いたところでビクともしないが、彫刻家が大きな玄能で何百回も何千回も叩けば、表面はゆがみ、輝き出してくる。おもしろいのは、そのへんで止めること。叩きすぎてなんら別のかたちにしたりしない。作業としては鉄をひたすら叩くという単純作業で、その効果は鉄の表面をこんもりと輝かせるだけ。鉄のかたまりは高いし、身体には応えるし、持ち運びは不便だし、作品が次々売れるとは思えないし、ストックするにも大変だし、端から見ればいいことなどひとつもないように思える。それなのに、いやそれだからこそ、よくこんなことを30年も繰り返してきたもんだとつくづく感心する。

2011/01/08(土)(村田真)

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2011年02月15日号の
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