artscapeレビュー
2011年02月15日号のレビュー/プレビュー
牧野智晃「Daydream」
会期:2011/01/12~2011/02/02
B GALLERY[東京都]
牧野智晃のデビュー写真集『TOKYO SOAP OPERA』(フォイル、2005)は、彼の母親の世代の中年女性たちを、その居住空間でわざと大げさなポーズをとらせて撮影するというシリーズだった。彼女たちのどうしようもない自意識過剰ぶりを、やや皮肉を込めてスペクタクルなドラマに仕立て上げたこのシリーズを、今度はニューヨークで2008年に再演したのが「Daydream」である。
前作と比較すると、カメラが中判から4×5インチサイズになったことで、室内のディテールがよりくっきりと写り込んでいる。距離もやや引き気味の写真が多く、「観察する」という態度が強まっているように感じる。それよりも興味深かかったのは、日米の女性たちの「演じる」ことへの意識の差だった。どうしても顔が引きつってしまい、ぎこちなくなりがちな日本の女性たちと比較すると、アメリカの女性たちは堂々とふるまっているように見える。笑うに笑えなかった前作よりも、今回の方が安心して「SOAP OPERA」を楽しめる気がした。ただ、このアイディアをこれ以上いろいろな国で展開しても、バリエーションが増えるだけであまり発展性はないように思える。「中年女性」というテーマそのものは面白いので、何か別なやり方を考えてみてはどうだろうか。写真展にあわせて、瀟洒な装丁の写真集『Daydream』(4×5 SHI NO GO)も刊行されている。
2011/01/18(火)(飯沢耕太郎)
わくわくSHIBUYA coordinated by 遠藤一郎/荒川智則個展 presented by カオス*ラウンジ
会期:2011/01/13~2011/02/13
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
2本の展覧会を同時開催。片方ではいろんな人たちが寄ってたかってワーッとやってる。いいなあこういうアナーキーなの。隣の部屋でもいろんな人が寄ってたかってワーッとやってるが、こっちのほうが作為というか悪意を感じる。いいなあこういうのも。さて、どっちがどっちだ?
2011/01/18(火)(村田真)
画像建築展
会期:2011/01/19
マキイマサルファインアーツ[東京都]
彦坂尚嘉が企画した画像建築展に、建築系ラジオのメンバーとともに出品者として参加した。たった一日の展覧会だったが、それではもったいない力作揃いだった。大西麻貴は模型とそれが実現された写真、北川啓介はライブで貼っていく新宿漫画喫茶の一週間漂流ドキュメント、南泰裕は3人の写真家による3つの住宅作品の写真、松田達は黄金神殿復元計画、そして筆者はコピー建築群による「it's a fake world」を展示した。建築家の高橋堅は自作と京都写真を展示、彦坂はサヴォア邸やファンズワース邸などのdub化され、引き伸された有名建築、糸崎公朗はフォトモ、そのほかにも中川晋介や栃原比比奈らアーティストも参加している。建築と写真をめぐって、さまざまな切り口が示され、会場ではシンポジウムも行なわれた。
2011/01/19(水)(五十嵐太郎)
藤原彩人──心ここにあらず
会期:2011/01/08~2011/02/07
3331ギャラリー[東京都]
陶による彩色人体彫刻。床置きの半身像もあれば、壁掛けのレリーフ彫刻もある。手前には高さ10センチ程度の人物像が数十点並んでいて、老若男女貧富貴賤白黒茶色それぞれ個性を持たせている。柔らかくて100年も経たずに消えてしまう人間の姿を、数千年も数万年も変わらぬ色とかたちを保つ陶で残そうとしているのだろうか。あるいは100万年後に地球を訪れるかもしれない宇宙人へのお土産?
2011/01/20(木)(村田真)
福嶋さくら“from yesterday”
会期:2011/01/15~2011/02/06
Bambinart Gallery[東京都]
案内状にはメルヘンチックな絵が刷られていたのでパスしようかと思ったが、せっかくなので入ってみたらちょっとおもしろかった。綿布に家や花や遊具などがポツンと寂しげに描かれているのだが、よく見ると背景の空や地面は絵具でざっくり塗ってあるのに、家とか花とか図の部分は絵具ではなく、さまざまな色の刺繍糸で縫っているのだ。布に色彩をのせていく絵画も還元すれば「塗る」と「縫う」という行為に行きつく。そんなことを思い起こさせる作品。
2011/01/20(木)(村田真)