artscapeレビュー
2011年04月15日号のレビュー/プレビュー
秦雅則「明るい部屋」
会期:2011/03/08~2011/03/13
企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]
企画ギャラリー・明るい部屋が最後の展覧会を迎えた。小野寺南、三木義一に続いて、実質的にギャラリーの活動を牽引してきた秦雅則による展示である(もうひとりのメンバーの遠矢美琴は既に1月に「保存」展を開催)。
ギャラリーの壁に大きなアクリル板にサンドイッチされて並んでいるのは、一見不定形のパターンの抽象画のように見える作品。「光(今回の場合は、太陽からの光ではなく室内で燈されていた科学的な光)と時間(2011/1月~3月の間の企画ギャラリー・明るい部屋に存在した時間)を、抽出し記録したもの」という説明がある。これだけでは何のことかよくわからないが、実はギャラリーの蛍光灯に晒し、天井裏のスペースに保存した現像済みのカラーフィルムからプリントした作品ということのようだ。つまり、「光と時間」の作用によって、フィルム上に発生したカビや染みのようなパターンを、そのままプリントしたのだ。
そんなことをやって何か意味があるのかということだが、秦としては「やってみたかった」ということに尽きるのではないか。予想不可能なパターンの変化をしっかりと確認することで、写真の生命力、生産力を祝福することが、ギャラリーの活動の締めくくりにふさわしいと判断したということだろう。2年間走り続けた企画ギャラリー・明るい部屋は、次の週から解体工事が開始され、間もなく姿を消す。だが、その果敢な冒険の軌跡は長く記憶に残っていくだろう。
2011/03/09(水)(飯沢耕太郎)
高橋万里子「Night Birds」
会期:2011/03/05~2011/04/22
photographers’ galleryのメンバーのひとりとして、高橋万里子は2002年以来コンスタントに作品を発表し続けてきた。2009年には同ギャラリーで4回にわたって「月光」シリーズを展示し、人物、人形、植物、剥製などを、室内灯だけでぼんやりと浮かび上がらせて撮影する独特な作品のスタイルを完成させた。
今回の「Night Birds」も、基本的にはその延長線上にある。被写体になっているのはさまざまな鳥の死骸で、フライフィッシングの毛針の材料としてその羽が用いられるのだという。極彩色の羽を持つ鳥たちは、宙吊りにされているようなやや不安定な構図で画面におさめられている。蛍光灯などのコントラストの強い光が、そのどことなく不吉なフォルムを照らし出し、ブレやボケが強調されることでより禍々しい印象が強まる。あたかも死のなかから強引に生の気配を引き出そうとするようなその手つきによって、鳥の死骸は宗教的な儀式で使用される呪物のようにも見えてくる。まだどうなるか予測はつかないが、「月光」シリーズの発展形として今後の展開が期待できそうだ。
なお、同ギャラリーの向いの部屋にリニューアル・オープンしたKULA PHOTO GALLERYでは、高橋のもうひとつのシリーズ「lonely sweet」が展示されていた。こちらはクリームソーダ、アイスクリーム、パフェ、果実類などの「sweet」が、やはり同じ手法で撮影されている。一見おいしそうだが、実はすべて食堂のショーケースなどで使われるサンプル食品だという。不安感よりは、どちらかといえば安らぎや懐かしさを感じさせるシリーズで、これを見ても高橋の表現力の幅が大きく広がってきていることがわかる。
2011/03/10(木)(飯沢耕太郎)
第14回岡本太郎現代芸術賞展
会期:2011/02/05~2011/04/03
川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]
ワラ、竹、土などを積み上げて巨大な祠を建てたオル太(岡本太郎賞)をはじめ、黒い服に黒い髪の顔の見えない女性像をあっちこっちに配した望月俊孝(岡本敏子賞)、木の本棚をうずたかく積み上げた高野浩子、大型素粒子加速器みたいなものをつくった上田尚宏、ほかにも熊澤未来子の絵画や諸橋健太郎のインスタレーションなどなど。このコンペはほかに比べて破滅的でグロテスクな作品が多いけど、とくに今年は黙示録的ともいうべき作品が目立ったなあ。さすが「芸術は爆発だ」と喝破した芸術家の名を冠したコンペだけあるわい、と思ったら翌日やってきました大地震が。オル太の祠や高野の本棚は崩れなかっただろうか、心配だ。
2011/03/10(木)(村田真)
建築・土木のある風景
会期:2011/03/03~2011/03/22
横浜市民ギャラリー[神奈川県]
市民ギャラリー主催のコレクション展なので全館使うのかと思ったら、3階のいちばん奥まった場所でつつましく開催。ギャラリーの所蔵品から、横浜港周辺の歴史的建造物やベイブリッジをはじめとする工事中の風景を描いた絵を集めたもの。絵なので建築・土木の正確な記録にはならないが、逆に作者の、あるいは時代の気分が色濃く表われてその建造物に対する思いがよく伝わってくる。「?」と思ったのは制作年で、全61点のうち70年代以降の作品が大半を占めるが、なかでも79年が24点、88年が27点と、この2年だけで8割以上になる。79年が多いのは、この年に開港120周年記念として同ギャラリーで「横浜百景展」が開かれたから。88年が多い理由は不明だが、おそらく市制100周年の前年で、みなとみらい地区が整い、横浜博覧会をひかえて盛り上がったからだろう。でもそれなら89年の作品があってもいいはずなのに見当たらないし、それどころか88年以降の作品は1点もない。そういえば横浜美術館が開館したのは89年のことだから、市民ギャラリーの購入予算が削られたのかもしれない。どうでもいいけど。
2011/03/10(木)(村田真)
神奈川多摩美2011
会期:2011/03/06~2011/03/11
横浜市民ギャラリー[神奈川県]
3階から団体展を見ながら降りたら、1階で上田雄三とか海老塚耕一とか聞いたことのある人たちが出してる玉石混淆の不思議な展覧会をやっていた。多摩美交友会神奈川支部の主催だそうだが、こういう展覧会に出すことにどんなメリットがあるんだろうと考えてしまった。
2011/03/10(木)(村田真)